牛肉と马铃薯_国木田独步_日本语文学.pdf

牛肉と馬鈴薯 国木田独歩 クラブ ほりばた づくり 明治倶楽部 とて芝区桜田本郷町のお 堀 辺 に西洋 作 の余り立派ではないが、そ れでも可なりの建物があった、建物は今でもある、しかし持主が代って、今では明治倶楽 しま 部その者はなくなって 了 った。 ま ある この倶楽部が未 だ繁盛していた頃のことである、 或 年の冬の夜、珍らしくも二階の食 あかり つ おりおり そと いったい 堂に 燈 火 が点いていて、 時 々 高く笑う声が外面 に漏れていた。 元 来 この倶 いつ 楽部は夜分人の集っていることは少ないので、ストーブの煙は平常も昼間ばかり立ちのぼ っているのである。 しか さっき 然 るに八時は 先 刻 打っても人々は未だなかなか散じそうな様子も見えない。 くるま 人力車 が六台玄関の横に並んでいたが、車夫どもは皆な勝手の方で例の一六勝負最中らし い。 がいとう えり なかおれぼう まぶか かぶ すると一人の男、 外 套 の 襟 を立てて 中 折 帽 を 面 深 に 被 ったのが、 まっくら よびりん 真 暗 な中からひょっくり現われて、いきなり手荒く 呼 鈴 を押した。 あ 内から戸が開 くと、 いで おちつ たず 「竹内君は来てお 出 ですかね」と低い声の 沈 重 いた調子で 訊 ねた。 あなた 「ハア、お出で御座います、 貴 様は？」と片眼の細顔の、和服を着た受付が丁寧に言っ た。 いだ せいふ 「これを」と 出 した名刺には五号活字で岡本 誠 夫 としてあるばかり、何の肩書もな い い。受付はそれを受取り急いで二階に上って去ったが間もなく降りて来て こちら ストーブ さかん た 「どうぞ 此 方へ」と案内した、導かれて二階へ上ると、 煖 炉 を 熾 に燃いて あった ストーブ いたので、ムッとする程 温 かい。 煖 炉 の前には三人、他の三人は少し離れて椅 かたわら テーブル びん のっ 子に寄っている。 傍 の 卓 子 にウイスキーの 壜 が 上 ていてこっぷの飲み つ い ま 干したるもあり、注 いだままのもあり、人々は可い加減に酒が廻わっていたのである。 た 岡本の姿を見るや竹内は起 って、元気よく ひとつ 「まアこれへ掛け給え」と 一 の椅子をすすめた。 つ うち 岡本は容易に坐に就 かない。見廻すとその 中 の五人は兼て一面識位はある人である