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合金化／脱合金化による金属表面へのナノポーラス構造構築 京都大学大学院エネルギー科学研究科 助教 袴田 昌高 （平成22 年度奨励研究助成 AF-2010031） キーワード：ポーラス，表面，金属 1. 研究の目的と背景 応用可能性を広げられる。そこで本研究では、Pt 板の表 白金 (Pt) はクラーク数が 5 × 10−7 と極めて低く、しか 面を通電加熱により合金化したのち脱合金化することで、 も鉱床の偏在が著しくその生産の75%以上は南アフリカ Pt 板表面にナノポーラス構造を形成させることを試みた。 からの生産である 1) ことから、金属資源のなかでもきわ めて希少である。加えて、近年の環境問題の高まりを受 2. 実験方法 けて自動車排ガス浄化用触媒としての需要が急激に高ま 合金化／脱合金化による Pt 表面のナノポーラス化の ったことから、Pt の価格が高騰するなど、Pt の供給は不 模式図を図 1 に示す。まず、真空室内の黒鉛電極間に、 安定化した。 表面を 4000 番で研磨した Pt 板（田中貴金属製、厚さ約 触媒として Pt が用いられる際には、ナノ粒子としてメ 0.7 mm）の上に市販の Cu 箔（ニラコ製、厚さ約 30 µm） ソポーラスシリカなどのポーラス体に担持させる手法が を重ねた試料を配置し、2.6 kN の荷重で電極間に固定し 主流である 2)。Pt の触媒作用は Pt 表面で起こるため、Pt たうえで 973 K ・10 分間の通電加熱を行うことにより、 粒子のサイズをナノメートルオーダまで小さくすること Pt および Cu の相互拡散により表面を合金化した。通電 で比表面積が大きくなり、少ない使用量で大きな触媒活 加熱には放電プラズマ焼結装置（住友石炭鉱業製）を用 性を得ることが可能である。 いた。その後、表面を合金化した試料を作用電極、対極 ナノメートルオーダにまで寸法を小さくすることで を Pt 板、基準電極を飽和カロメル電極(SCE) とした三極 表面積を稼ぐもう一つの手法として、Pt そのものをナノ 式の電解セルを用いて 0.1 mol/L H2 SO4 溶液中+1.1 V ポーラス化することが挙げられる 3,4)。ナノポーラス化の （SCE 基準、以降電位は SCE 基準で記述する）で定電位 手法として簡便なのが脱合金化法である 5)。脱合金化法 電解を 22 時間行った（脱合金化）。この電解の過程で、 では貴な金属と卑な金属の 2 元系合金から卑な金属のみ 合金化した表面から Cu が溶解除去されると同時に、溶 を酸などの電解液中で溶解除去することで、溶解せずに 解しない Pt は固体／電解液界面で拡散・自己集積し、ナ 残った貴な金属がナノメートルオーダの孔径の開気孔構 ノポーラス構造を形成する 3,4)。電解後の試料は純水で洗 造を形成する。これまでの研究により、Pt3,4)や Au5) をは 浄し、以下に述べる観察・分析に供した。 じめ、Pd6–8) 、Cu9,10) 、Ni 11) など種々の金属をナノポーラ ス化することができることがわかっている。 1. Stacking 2. Hot pressing 3. Dealloying 脱合金化により作製されるナノポーラス Pt は約 5 nm Cu foil Surface Alloying Nanoporous Cu2+ structure かそれ以下の超微