日本下垂体研究会志-自治医科大学.PDFVIP

日本下垂体研究会誌 Journal of Japan Society for Pituitary Research 論文Ⅰ- 1 ラット下垂体ゴナドトロフに見られるアネキシンA5 のLH サージ出現に伴う分布の変化 汾陽光盛 北里大学・獣医学部・獣医生理学研究室 mitsumor@vmas.kitasato-u.ac.jp 要旨 下垂体前葉の黄体形成ホルモン（LH）分泌は、視床下部のゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)で調 節される。GnRH によってゴナドトロフでアネキシン A5 （ANXA5）の合成が促進され、LH の合成と 放出に対して促進的に作用することを既に報告した。本研究では、生理的LH 放出に伴ってゴナドトロ フにおいてANXA5 の分布に起こる変化を免疫組織化学法で検討した。LH サージのピークが１７：０ ０時に観察され、この時LHサブユニット陽性のゴナドトロフでは、細胞質に粗面小胞体の拡張像と 考えられる空胞構造が出現し、光学顕微鏡レベルで容易に観察された。この空胞構造は２３：００時 で更に拡大していた。ANXA5 は１１：００時と１４：００時に核内に認められたが、１７：００時に は核内から細胞質に移動しており、細胞質内の特に核周囲と細胞膜付近に存在することが明らかとな った。更に、GnRH 受容体拮抗薬とペントバルビタールを投与して LH サージを抑制したところ、これ らの変化は消失した。以上の本研究の結果から、発情前期のGnRH 受容体刺激によって ANXA5 がゴ ナドトロフ内で局在を変えることが明らかになり、ANXA5 が LH 分泌に生理的に関与していることが 示唆された。 日本下垂体研究会誌Journal of Japan Society for Pituitary Research (vol.2, 1-5, 2015) 視床下部で産生される GnRH は、下垂体のゴ ける作用機序はよく分かっていない。生理的な ナドトロピン産生細胞( ゴナドトロフ) で、ゴナ ゴナドトロピン放出への関与も不明なままであ ドトロピン（黄体形成ホルモン(LH) と卵胞刺激 る[7, 10]。 ホルモン(FSH)）分泌を促進する。LH の大量放 本研究では、生理的な LH 大量放出である発 出は排卵を誘起する直接の刺激となる。GnRH 情前期の LH サージにおける、ゴナドトロフ内 は、ゴナドトロフ上の膜7 回貫通型GnRH 受容 のANXA5 の変化を検討した。 体に結合し、受容体と共役する三量体G 蛋白質 の Gq/11 サブユニットを介して、ホスホリパ 材料と方法 ーゼC(PLC) を活性化するが、GnRH 受容体刺激 による LH 放出促進機序には、複数の経路が複 １．実験動物 雑に関与しており未だに不明な点が多い[1, 2]。 本研究には、動物繁殖研究所（財）より導入 当研究室の一連の研究で、ゴナドトロフにア し、当教室で継代維持している成熟雌ウイスタ ネキシン A5 （ANXA5 ）が発現し、GnRH の ーイマミチラット（３− ６ヶ月齢；