口腔領域における抗生物質の組織内濃度に関する研究.pdfVIP

474 CHEMOT HERAPY JULY 1978 口腔領域 におけ る抗生物質 の組織 内濃度 に関す る研究 中 村 正 利 ・玉 井 健 三 金沢大学医学部歯科口腔外科 (主任:玉井健三教授) (昭和52年10月4日 受付) 緒 言 Fig. 1 Experimental method 近年抗生物質 の進歩に ともない,そ の使用頻度は増加 してい る現状 である。その際,抗 生物質 の選択 について は,感 受性,副 作用 もさることなが ら,組織移行につい て も決定の重要な要素であることは周知 の事実である。 しか し,と くに 口腔領域 におけ る組織内濃度 に関 して は,そ のほ とん どが小動物 を使用 した実験報告が多 く, 実際臨床 上困難を極 めることがある。 今 回われわれは,臨 床で最 も広 く使用 されてい る広範 囲抗生物質Cephalosporin-C系の うち,口腔外科領域 で使用頻度の高いCephaloridine(CER)について,口 腔領域 の組織,と くに手術 時に不要 とされ る摘 出歯 肉を を注射用蒸留水2mlに 溶解 し,手術 開始前 に筋肉注射 被検材料 として,そ の組織内濃度 を検索 した0そ の際, をお こない,手 術中において筋注1時 間経過 した時点で 採取 した歯肉の組織構造の相違,す なわち健康 な正常歯 摘 出されて くる歯肉を採取 し,同時に患者の下肢静脈か 肉 と線維化 の強い組織つま り瘢痕歯 肉 とでは抗生物質の ら採血 をお こない実験に供 した。 移行に相違が認 め られ るであろ うと考 え,両者者の組織 採取 した歯肉は滅菌ガーゼにて付着血液 を除去 した 内濃度を測定 し,同時に血 中濃度を対照 として これ らを 後,で きる限 り早急 に血液は3,000rpm,10分間遠心を お こない,歯 肉は計量 した後100mg/mlの割合 で生理 比較検討 した。 また麻酔法 に よる移行濃度 の相違 の有 無,さ らに性別に よる移行 の相違について も分析 したの 食塩水で稀釈 し,homogenizeした後,血 液 はその血清 でその概 要を報告す る。 を,一方,歯 肉は上清液を用い,わ れ われが従来か ら施 実験材料および実験方法 行 してい る円筒平板法2)～9)によ り,血中濃度お よび歯肉 使用薬剤:CER500mg(力価)筋静注液 を選択使用 し 組織 内濃度を測定 した。 実験に供 した。 また同様の薬剤 を標準 曲線用 に供 し,既 標準液は各症例 ごとに作製 し,標準曲線を求め,そ れ か ら各移行濃度 を算出 した ものである。得 られた値 は, 知濃度 の標準液(25,12.5,6.25,3.125,1.56,0.78μg/ ml)を各実験 ごとに作製 し検討 した。 各症例を比較す るために患者 の体重 の相違 を考慮 し,1 mg/kgのCERを投与 した場合 の各移行濃度を算 出し 使用菌数:検 定菌にはBacillussubtilisATCC6633 株 を使用 し,日抗基 に準 じて実験を施行 した1)。す なわ た。 ち普通寒天斜面培地でSemiSynchronizationした後, その算定法は 胞子用培地で37℃,1週間培養 し,滅菌生理食塩水で胞 子液を作製 し,65℃