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国際ビジネス法総合１ 第6 回 契約締結 （教材②－１） 〔Introduction〕 第 6 回と第7 回は、アメリカ合衆国という国を題材にして、海外でビジネス活動をする ことがどのような問題を伴うのか、また法という道具がどのように使えるのか、または使 えないのかを考えていくことにする。 アメリカと聞くとどのようなイメージを持つだろうか？法文化という観点に絞っても、 陪審裁判、訴訟社会、取引の国、人種的多様性、格差社会 ・・・と我々のなじんだ日本と は異なる文化が想像できるのではないだろうか。ここでは、こういった文化の違いが、具 体的な取引や紛争において大きな意味をもつことを、事例をもとに感じ取ってほしい。 第6 回で扱うのは、2006 年にトヨタ自動車の北米子会社の社長が性的嫌がらせ（sexual harassment セクハラ）で訴えられた、という事件である。事件は、下で掲げた新聞記事 からもわかるように、日米でかなり話題になった。素材としては、この事件で原告が裁判 所に提出した訴状を扱う。まさに「訴えられた！」という瞬間を体験し、ではどうすれば よいか、考えてゆこう。 訴状を見れば分かるように、この事件で訴えを起こしたのはアメリカに永住権をもつが、 国籍は日本の女性従業員である。日本人が日本企業をアメリカで訴える、ということも、 十分にありえるし、むしろ訴訟戦略として有利な場合も少なくない。だから、将来海外で 働きたいと考えている人は、訴える側に立って、企業がどういう手に出るか、という視点 で考えてもよいかもしれない。 〔事実の概要〕 事実の概要は、あえて掲げない。次のページからの訴状の日本語訳を予習しつつ、自分 で事実関係を押さえてほしい。事実関係を整理しながら、あとの〔Questions〕に沿って考 えてみよう。 なお、訴状の原文は、HP に掲げている。ホンモノを見てみたいという人、英語でチャレ ンジしてみたい人は、そちらにアクセスしてほしい。 [第6 回] 1 〔訴状：Kobayashi v. Toyota Motors Company〕 ニューヨーク州ニューヨーク郡 最高裁判所 小林 サヤカ 整理番号 原告 訴状 対 トヨタ自動車株式会社、 トヨタ・モーター・ノース・アメリカ（株） 及び大高英昭 被告 原告小林サヤカは、弁護士事務所Ziegler, Ziegler Associates, LLP を通じ、被告トヨ タ自動車株式会社( 「日本トヨタ」)、トヨタ・モーター・ノース・アメリカ（株）( 「北米ト ヨタ」)および北米トヨタ社長兼CEO(大高英昭( 「被告大高」))( 日本トヨタ、北米トヨタおよ び被告大高をあわせて「被告ら」と呼ぶ) に対する訴状として、以下のように陳述する。 概要 1. 小林さんは、1997 年にアナーバー( ミシガン州) のアメリカ・トヨタ・テクニカル・ センター社に就職した。2002 年、小林さんは、ニューヨーク市で北米トヨタの企画業務部に 配属された。2005 年3 月、小林さんは、被告大高の社長付アシスタントになるように依頼さ れた。北米トヨタのトップからのオファーを断るのは賢明ではないと考え、小林さんはその ポジションを受け入れた。ところが、そのポジションは、小林さんの望むキャリア・アップ へのステップとなるどころか、まさに悪夢となったのである。 2. 被告大高の社長付アシスタントのポジションについて6 か月も経たない2005 年 8 月、小林さんは、被告大高からの不快な性的な口説きとセクハラのターゲットにされた。こ の訴状に詳細に变述するように、被告大高及び北米トヨタによる小林さんに対する具体的セ クハラ行為には、以下のものが含まれていたが、それだけには限られない: [第6 回] 2 ・被告大高による小林さんへの性的暴力。被告大高は、彼女にのしかかろうとした。 ・