蛋白质と膜融合吉村哲郎.PDFVIP

蛋白質と膜融合吉村哲郎 最近,細胞膜融合に蛋 白質 が広 く関与することが認識 されてきた。 ウイルス感染に関与 するエ ンベ ロープ蛋白質, 細胞内物質輸送系における膜融合装置, 分泌系におけるCa^2+ 依存性 リン脂質結合蛋白質などがその代表例 である。 さらに, 膜融合蛋白質の構造的特徴 および膜融合過程 における特異的挙動 に基づいて, 魅力的な膜融合誘起機構モデルが提 出 e された。 この機構モデルでは,膜融合蛋白質が標的膜 の脂質二重層構造を破壊 ・再編成 し c i v て膜融合に導 く分子過程が,明快 に論 じられている。本稿では, これ らの知見を整理 し, r e S このモデルについて解説する。 e n i l n O e c は じめに 膜融合 は,受精,筋発生,細胞融合,細胞 果, イ ンフルエ ンザ ウイル スの膜融合蛋 白質に よって誘 n e i 分裂, ウイル ス感染, エ ン ドサイ トーシス,エキ ソサイ 起 され る膜融合 の分子機構 に関 して興 味深い作業仮説が c S e トーシス,細胞 内物質輸送 などの,種 々の細胞機能にお 提 出された^1～3)。筆者 らは, 蛋 白質 に よる膜融合 の誘起 f i L けるきわめて重要 な過程 である。膜融合 とは文字 どお り 機構 に共通機構が存在す る との前提 に立って^4),受容体 r o 膜系 と膜系 との融合反応 であるが,生体 内ではそれが 自 f 仲介エ ン ドサイ トーシスお よび細胞 内物質輸送 に主要な r e 発的に生 じることはほ とん どな く,何 らかの融合誘起剤 役割 を果た している蛋 白質 クラス リンお よび リポソーム t n e (fusogen)が関与す る とされている。最 も生理的で代表 膜系 を用いて, クラス リンに よる リポソーム膜融合 に C e s 的な fusogenは,二価カチオ ン,とくにカル シウムイオ ついて調べ, その分子論的機序を おお むね 明 らかに し a b a ン (Ca^2+)である。 た^5～11)。 t a D しか し最近, これ らの膜融合過程 に蛋 白質が関与す る 本稿 では,生体膜融合 において蛋 白質が重要 な役割 を とい う知見が数多 く集積 されつつ あ り,生体膜 にお ける 演 じている例 をあげ,その うちの代表 的な蛋 白質 の構造 膜融合反応は,Ca^2+よりむ しろ蛋 白質 によって駆動す と機能 における特徴 を整理 し,蛋 白質に よって誘起 され るとい って も過言ではない。 それでは,特異 な構造をも る膜融合 の分子論的 メカニズムに ついて 考察す る。 な つ生体高分子蛋 白質 が, どの ように して脂質二重膜構造 お,本稿 の主題 に関す る他 の側 面お よび膜融合 の研究法 を乱 し,別の方 向に脂質二重膜構造 を再形成す るのであ については,別 の総説^1,12)や成書^13,14)を参照 されたい。 ろ うか? この疑 問に答 えることは,上記 の細胞機能を 理解する第一歩 であるだけでな く,生体膜 における他 の