皮肤悪性肿疡-东京大学医学部附属病院.PDFVIP

良性と悪性の皮膚腫瘍  皮膚やその下の組織（皮下組織）の細胞が増殖して、 細胞の塊ができることがあります。  これを医学用語では「皮膚腫瘍」と呼び、患者さん は多くの場合、皮膚にできた「できもの」とかコブ のような「しこり」として自覚します。  皮膚腫瘍は、大きく「良性」のものと「悪性」のも のに分けられます。  良性腫瘍は比較的顔つきの良い腫瘍で、周囲の組織 を圧排しながら増殖し、肉眼的にも顕微鏡的にも、 皮膚良性腫瘍 周囲との境界が明瞭な膨脹性増殖を示します。良性 腫瘍は放っておいてもすぐには命に別状はありませ 石灰化 母斑細胞 んが、徐々に増大して整容的な問題（変形）や機能 粉瘤 皮様嚢腫 障害（運動障害や知覚障害）を引き起こしたり、中 上皮腫 性母斑 には悪性に転化する場合もあります。 耳下腺 脂腺母斑 脂肪腫 神経鞘腫  悪性腫瘍は顔つきの悪い腫瘍で、隣接する正常な組 腫瘍 織に入り込んでいったり（浸潤）、体の他の部位に 広がっていき（転移）、やがて生命を脅かします。  当科では良性悪性を問わず、右図に挙げたような疾 皮膚悪性腫瘍 患をはじめ、さまざまな皮膚腫瘍を治療対象として います。また腫瘍の発生母地を問わず、皮膚に露出 していたり、皮膚から触知するものは全て広義の意 基底細胞癌 有棘細胞癌 悪性黒色腫 味で皮膚腫瘍として扱っています。 皮膚悪性腫瘍の治療 基底細胞癌  身体にできた腫瘍に対する治療の原則は、腫瘍細胞を「一つ残らず全て除 去する」ことです。これを「腫瘍の制御」といい、うまくいくと病気が 「根治」します。  顕微鏡でないと見えないような小さな腫瘍細胞でも体内に残ると、やがて 「再発」します。悪性腫瘍の場合は、再発時に既に多臓器に転移して手遅 れになっている危険があります。  悪性腫瘍を除去するための治療法には下記の選択肢があります。 有棘細胞癌 (1) 外科的切除 (2) 化学療法（抗癌剤治療） (3) 放射線療法  この中で確実性（根治性）の高い治療が(1)の外科的切除で、(2)と(3)は (1)の補助的な効果を期待して行われる場合がほとんどです。  しかし浸潤傾向の強い悪性腫瘍細胞を全て取りきるには、ある程度の安全 域を含めて切除する必要があるため、皮膚の欠損範囲は大きくなるケース も少なくなく、その場合は単純な縫合閉鎖が困難になります。 悪性黒色腫 切除 当科における治療の特徴  このように皮膚悪性腫瘍の治療に大切なことは 「腫瘍の制御」であり、これを専門にしている診 療科のことを「腫瘍外科」と呼びます。主に皮膚 腫瘍外科を専門とした科としては、腫瘍の部位に よっても異なりますが皮