第Ⅰ章绪言-千叶県.PDF

千葉農林総研特報 （CAFRC Spec. Res. Bull.） 7 ：1－54 (2016） 第 Ⅰ章 緒 言 第 １節 研究の背景 ン資源 としては，下水汚泥が有望とされているが （黒田ら， 2005），畜ふんも重要なリン資源であり，その排出量は 大量生産・大量消費・大量廃棄を基本 とした経済活動は， リン成分 として年間22万t と推定されている （水谷，1997）． 資源の枯渇や廃棄物処理の限界 といった問題を生み出し 本研究で取 り上げる畜ふん尿を原料 としたメタン発酵消 ている．このような問題に対応するために，再生可能な資 化液の固体分にもリンが含まれてお り，その農地施用はリ 源を有効利用する循環型社会の構築が必要とされている． ン資源の有効利用につながる．本研究ではメタン発酵消化 循環型社会の構築には，自然の恵みとしてもたらされるバ 液の固体分を炭化 した資材のリン酸肥料的効果を明らか イオマスの有効利用が必須である．こういった状況を踏ま にした．その詳細については第Ⅲ章で後述する． え， 日本政府は2006年にバイオマス ・ニッポン総合戦略 IPCC （2013）は，温室効果ガスであるCO とN Oの大 2 2 を打ち立て，バイオマスの利活用を図るための方策を打ち 気中濃度が，産業革命前の280ppmおよび270ppb から， 出した （農林水産省，2007）． 2011年にはそれぞれ391ppm と324ppb に増加 したと報告 バイオマス ・ニッポン総合戦略においては，地域内で発 している．このように人間の経済活動により，温室効果ガ 生するバイオマスをエネルギーや素材 として利用する仕 スが排出され，地球温暖化が進んでいることは明らかであ 組みを構築するバイオマス・タウンの策定を推進 している． る．温室効果ガスを排出する人間の経済活動には，様々な バイオマス ・タウンとは， 「域内において，広 く地域の関 ものがあるが，農業もその例外ではない．大気中に放出さ 係者の連携の下，バイオマスの発生から利用までが効率的 れる温室効果ガスの10～12 %は農業によるものとされて なプロセスで結ばれた総合的利活用システムが構築され， いる （FAO，2014）． 安定的かつ適正なバイオマス利活用が行われているか，あ 一方，農業には温室効果ガスの削減効果もあると考えら るいは今後行われることが見込まれる地域」 と定義 され れてお り，1997年に開催 されたCOP3を踏まえた京都議定 (農林水産省，2007），2013年4月末時点では， 日本全国 書には，農地土壌への炭素貯留が温室効果ガスの削減方法 で318地区がバイオマス ・タウン構想を発表 している． として取 り上げられている．具体的な方法の １つとして炭 バイオマス・タウン構想で うたわれるバイオマス利活用 化物の農地施用が考えられ，バイオマスを炭化 したバイオ の技術 としては，様々なものがあるが，バイオマスをエネ 炭の施用は，温室効果ガスの削減につながると期待 されて ルギー変換する技術 として，メタン発酵技術が有望視 され いる （Lehmann，2007）．バイオ炭には，温室効果ガス ている．本論文では研究の対象をメタン発酵の副産物 とし の削減以外にも，肥料 としての効果や重金属の吸着効果な て発生するメタン発酵消化液由来の資材 としてお り，メタ どが期待 され，研究が進められている．その概況について ン発酵技術の概要については第2節，その現況に