連続高速圧縮成形法(R 法) 絵画用無鉛絵具の特性について(Ⅱ)(低融機能性フリットカラーの研究(Ⅴ)).pdfVIP

京都府中小企業技術センター技報№38（2010） 連続高速圧縮成形法（Ｒ法）絵画用無鉛絵具の特性について（Ⅱ） （低融機能性フリットカラーの研究（Ⅴ）） 矢　野　秀　樹＊１ 森　　　秀　次＊２ 中　川　晴　雄＊３ 大　田　陸　夫＊４ ［要　　旨］ 　日本画用絵画絵具においては、環境汚染ガスによる変質等の問題で無鉛化が急務となっている。今回、 ロータリ圧縮成型機を用いた連続高速圧縮成形法（Ｒ法）（特許NO.4099486関連）によって、20種類の 無機顔料を用い各10階調、計200個（種類）の絵画用無鉛絵具を作成した。当研究ではその内の100種類 の成分、組成、加飾特性等の試験及び描画試料に関する耐環境汚染ガス（硫化水素ガス、亜硫酸ガス、 二酸化窒素ガスの３種類）試験等を行い、得られた描画用無鉛絵具に関する各種の特性などを研究評価 した。以上の結果、①今回試作したＲ法絵画用無鉛絵具は現用絵具のように10階色に分級でき、またそ の全てが伝統的日本画の手法（膠使用）により日本画描画試料が作成でき、各絵具試料とも良好に発色 した。②Ｒ法試作絵画用無鉛絵具の環境汚染ガス耐久性については、環境汚染ガス処理前後の色差変動 を比較検討したところ、評価した描画試料全体（100種類）の色差変動（絶対値）は、ΔLが 0.8、Δa が 0.6、Δbが0.9、ΔW(Lab)が0.7であり、総体的には変色の肉眼識別可能範囲外にあり、殆ど変色せず、 環境汚染ガスに対する耐久性が確認できた。なお今後、一部の色差変動が大きい絵具試料については個々 に色差変動の要因を詳細に分析して特定し、その対応措置を含め更に研究する必要がある。 １　はじめに 4099486関連）を平成20年度のＪＳＴ地域ニーズ即応 　日本画絵画用絵具においては、環境汚染ガスに 型研究事業で確立した5），7）。この方法では、従来の よる変質、廃棄物の環境汚染等の問題で無鉛化が 坩堝溶融法と比較して極めて大量の溶融塊用のフ 急務となっている。著者等は絵画用絵具の無鉛化 リット・顔料成形体が製造できる特徴がある。し 製造技術について研究1～4）し、ロータリ圧縮成型機 かし、それに伴って、成型体に用いる大量のフリッ を用いた連続高速圧縮成形法（Consecutive high ト・顔料混合粉体の高速混合及び大量の成形物の speed rotary molding method：Ｒ法）による絵画用 高精度溶融方法の早期確立、新規に試作した多数 無鉛絵具の新規製造方法（京都府保有特許NO. の無鉛絵具についての特性評価及び一般及び専門 家ユーザの評価把握等が新規絵具上市のうえで極 ＊１　基盤技術課　主任研究員 めて重要となる。そこで今回、ナカガワ胡粉絵具 ＊２ 酒井硝子株式会社 株式会社に新規導入された焼成炉（ロペット社製 ＊３ ナカガワ胡粉絵具株式会社 NCK-25LT RTP-25P）等を用いて試作した絵画用 ＊４ 京都府中小企業特別技術指導員 無鉛絵具に関する特性評価について研究を行っ 　　　（京都工芸繊維大学　名誉教授） 6） た 。なお、この研究では、試作無鉛絵具の粒度評 －7－ 京都府中小企業技術センター技報№38（2010） 価に関して、同社が併せ