適用事例を通した交通シミュレーション利用実態の分析と利用促進への課題.pdfVIP

土木学会論文集IV，Vol.709，No.IV-56，pp.61-69，2002 年7 月 適用事例を通した交通シミュレーション 利用実態の分析と利用促進への課題 1 2 堀口良太 ・小根山裕之 1正会員 博(工) (株) アイ・トランスポート・ラボ（〒162-0824 東京都新宿区揚場町2-12-404） 2正会員 工修 東京大学助手 生産技術研究所第5部 ( 〒153-8505 東京都目黒区駒場4-6-1-C504) 本論文は，土木学会での「道路利用の情報化・効率化小委員会，評価ツールワーキング」および「交通 シミュレーション実用化促進ワークショップ」において収集した，道路ネットワークシミュレーションモ デルの適用事例を通して，シミュレーション利用実態の現状を分析したものである．分析に際しては，シ ミュレーションの目的，対象ネットワークの規模や性質，また入力や評価に用いたデータの質など，様々 な角度から事例を集計し，考察を加えている．さらに本論文の最後では，実務レベルでシミュレーション 利用を促進するための課題と，将来の交通シミュレーションへのニーズを述べている． Key Words: traffic simulation, practical application, gap iden tification, future requirements. １．はじめに た．同様のシミュレーション利用者に対するアンケ ート調査では，英リーズ大などが中心となって実施 3) 1990 年代以降，国内外で数多くの動的交通シミ したSMARTEST プロジェクト の事例があるが， ュレーションモデルの研究開発が活発に報告される ミクロシミュレーションに限定して，利用に際して ようになり，実務における適用事例も頻繁に報告さ の問題点を聞くなど，利用者の意識調査という側面 れるようになってきた．しかしながら，一般に入手 が強い．今回の試みでは，実際にシミュレーション できる文献などの資料だけでは，多くのモデルの特 モデルを利用している国内の研究者や実務者の協力 質を把握することは難しい．このため「シミュレー を得て，適用事例シート(付録参照) を収集した．こ ションはブラックボックス」という批判を免れず， のシートには，評価の目的や対象施策だけでなく， 実務で利用されるツールとしての信頼性を十分に確 道路ネットワークの設定や交通需要の獲得手段，現 立できない状況にあった． 況再現の評価指標といった，実施状況を示す様々な 土木学会における道路利用の情報化・効率化小委 項目を記入するようになっており，シミュレーショ 員会・評価ツールワーキンググループ(以下WG5)， ンの利用実態を反映した分析を行うことができた． および交通シミュレーション実用化促進ワークショ 事例を収集できたのは，AVENUE4)，NETSIM5) ， ップ( 以下 WS) では，これまで verification や validation といった各種のモデル検証手続きを通し AVENUE 11 1) てその能力を評価し ，かつそれらの過程を，シミ tiss-NET