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大成建設技術センター報 第44号(2011) PCB汚染汚泥からの溶出抑制に関する研究 ＊１ ＊２ ＊３ 斎藤 祐二 ・中島秀也 ・真保享一 Keywords : polychlorinated biphenyl, sludge, dissolution, cross-linked polyglutamic acid ポリ塩化ビフェニル，汚泥，溶出，ポリグルタミン酸架橋体 1. はじめに 出試験での溶出量で規定される。本研究では、溶出量 で規定されるPCB汚染汚泥に着目し、汚泥からのPCB ポリ塩化ビフェニル（PCB）は、絶縁性、不燃性な 溶出を防止する安価な対策方法について検討した。 どの特性により、トランス、コンデンサといった電気 機器をはじめ幅広い用途に使用されてきた。しかし、 2. 供試汚泥 昭和43年のカネミ油症事件を発端にその毒性が社会問 題化し、昭和47年以降国内では製造されていない。一 異なる工場から採取した２種類の実汚泥（A 汚泥、B 方、すでに製造されたPCB に関しては、民間主導によ 汚泥）を用いた。 るPCB処理施設設置の動きもあったが、施設設置に関 する住民理解が得られない等から、ほぼ30年の長期に 2.1 A汚泥 亘りほとんど処理が進んでいなかった。このような長 化学工場由来の汚泥であり、工場内の排水ピットに 期にわたるPCB保管に伴い、PCB の紛失や行方不明が 保管されている。ピット底部の汚泥をエッグマンパー 判明し、確実かつ適正な処理を推進するため、平成13 ジ採泥器を用いて採取した。また、上澄水も併せて採 年6月22 日には「ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処 取した。 理の推進に関する特別措置法」が公布された１）。これ A 汚泥の含水率、pH 、酸化還元電位（ORP）、汚泥 により、PCB廃棄物を所有する事業者等は保管状況等 含有成分を各々底質調査法、JIS K 0102 02、蛍光 X の届出や一定期間内に適正処分することが義務付けら 線法で測定した。その結果を表― １に示す。A 汚泥は れることとなった。 中性であり、ORP は-71.9mV と還元域であった。また、 平成 16 年からは、日本環境事業団㈱（JESCO）の 汚泥成分を見ると主要成分はケイ素、塩素であり、そ PCB 処理施設が開業し、現在、北九州、豊田、東京、 の他、アルミニウム、硫黄、鉄が 3～5％含まれていた。 大阪、北海道の５つの事業所が稼働している２） 。各事 業所での PCB 処理技術は各々異なり、北九州事業所で 表－1 A汚泥の性状 はプラズマ溶融分解、豊田及び東京事業所では脱塩素 Table 1 Properties of A-sludge 化分解、大阪及び北海道事業所では脱塩素化、水熱酸 含水率