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課題No.137
抗炎症作用を有する局所麻酔剤開発に向けての発展的研究
みや わき たく や
国立大学法人岡山大学 大学院医歯薬学総合研究科 教授 宮 脇 卓 也
概要
本課題は、すでに国内特許出願し、JSTよりPCT出願の支援を受け、米国、独国、仏国、英国
および中国の5か国への外国出願が決まっている発明に基づいて、さらにその価値を高めるための
ものである。その発明とは、局所麻酔剤にα2受容体作動薬を含ませることで、局所麻酔効果が持
続し、かつ安全性の高い局所麻酔用組成物になることを見出したものである。本試験研究は、さら
に、このα2受容体作動薬自体の抗炎症作用を証明することが目的であり、これによってα2受容
体作動薬を局所麻酔剤に含ませることで、抗炎症作用によって手術による痛みや腫脹を緩和し、治
癒の回復を早める効果が期待できる。
技術分野
創薬
1.開発技術の優位性
本課題は、すでに特許申請している「局所麻酔用組成物」の価値を向上させるための研究である。
局所麻酔は、歯科治療、外科処置、ペインクリニックに使用されているが、痛みを制御することが
目的で、その麻酔効果が強いこと、作用時間が長いこと、副作用が少ないことに開発の主眼が置か
れてきた。しかし、局所麻酔施行後には手術などの侵襲処置があり、患者は局所麻酔の効果が消失
すると(長くて数時間)、痛みや腫脹に苦しむことになる。本試験研究では、特許申請している「局
所麻酔用組成物」の添加物であるα2アドレナリン受容体作動薬(以下、α2受容体作動薬)の抗
炎症作用に注目し、局所麻酔剤に抗炎症作用を付与することを目標としている。抗炎症作用を有す
る局所麻酔剤を開発することによって、侵襲に伴う炎症による反応(痛みや腫脹)を抑制すること
ができ、患者の苦しみを軽減し、さらに術後の回復を早めることが期待できる。まさにこれは局所
麻酔の分野にイノベーションを与えるものである。我々が知る限り、このような概念は国内外で芽
生えておらず、いち早く研究を進めることで、さらに学術的に独走することができる。
2.技術の市場性と将来性
術後回復を早めることは、患者の早期退院を促進することになり、医療経済上、重要なポイント
である。全身麻酔による大がかりな手術は、可能な限り侵襲の少ない手術に移行しており、いわゆ
る低侵襲手術は世界的なレベルで外科の分野での大きな目標となっている。これが推進されていく
と、これまで全身麻酔で行われていた手術の一部が局所麻酔で行われるようになり、局所麻酔の需
要は今後大きくなると考えられる。全身麻酔自体、生体にとって侵襲であり、全身麻酔の過量投与
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が手術後の長期予後(死亡率)を悪化させることが報告されており、その観点においても、局所麻
酔剤の市場は将来拡大していくと考えられる。
さらに、術後の早期回復を目標とした場合、抗炎症作用は大きな利点であることから、抗炎症療
法は今後ますます発展していくと考えられるが、抗炎症作用を局所麻酔剤に付与することができれ
ば、局所麻酔をすることによって容易に抗炎症作用が期待できることから、その利用価値は大きく、
さらに大きな市場が期待できる。
3.目的・必要性
本課題の元である、すでに特許申請している「局所麻酔用組成物」の添加物であるα2受容体作
動薬の抗炎症作用を証明することが、本試験研究の目的である。われわれは、すでにα2受容体作
動薬に抗浮腫効果があることを、動物実験で証明している(図1)。
図1 マウス足蹠浮腫法を用いた実験結果で、起炎物質であるカラゲニン(Carrageenin)によって惹起された
炎症性浮腫(足蹠容積の増加率)の経時的変化を表している。α2受容体作動薬(Dexmedetomidine)が
カラゲニンによる炎症性浮腫に対して、抗浮腫効果を有していることが示されている。
浮腫などの炎症反応は、起炎物質や傷などによって組織で産生される炎症メディエータによって
媒介され増幅されていく。α2受容体作動薬の抗浮腫効果の作用機序を解明するためには、媒体で
ある炎症メディエータの動態を観察する必要がある。そこで炎症メディエー
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