第13 章化学風化および大気CO 2 と気候へのその影響.docVIP

第13章　化学風化大気CO2と気候　　　　　CH2O＋O2→CO2＋H2O　　　　　 （5） 　この反応は、風化は大気CO2に対して吸収源であると同様に供給源でもありえることを示している。〔反応（5）の極端な例は化石燃料の燃焼であり、これは人類により大きく加速された風化を表わす。〕あいにく古い時代の有機物の天然風化はよく理解されておらず（例えばHedges, 1993）、ここでは議論しないことにする。このことはそんなに問題があることではない、というのはケロジェンの酸化によるCO2の放出は、珪酸塩と炭酸塩の風化による取り込みよりも、定量的には重要でないことを、質量バランス計算（Berner, 1991）が示しているからである。 　珪酸塩と炭酸塩の風化により生成したHCO3-は土壌と地下水から河川へ運ばれ、そして河川によって海洋へ運ばれる。100年から10万年の時間にわたり、この溶存炭素は海水中に蓄えられるが、もっと長い数100万年という期間では炭素の貯蔵は継続できない、なぜなら海水は、無機CaCO3の沈殿が起こる前にちょうど相当するだけの溶存HCO3-（と伴うCO32-）しか保持できないためである。〔地球はちょうどその位の生き物しか維持できないため、数100万年にわたる生物相中の炭素貯蔵量についても同じことが言える。〕したがって、海洋におけるCO2の貯蔵とそこからの放出は、100年～1000年の時間では炭素循環の重要な側面である（例えば、Opdyke and Walker, 1992；Sarmiento, 1993）が、海洋のインプットがアウトプットとつりあっていなければならない数100万年の時間においてはそうではない（Berner, 1991）。ここで我々は、炭素の貯蔵と放出が大気と海洋と生物圏間での移動を含む短期の（1000年～10万年）炭素循環を、貯蔵と放出は岩石に対してのみであるようなもっと長期の数100万年の地球化学的炭素循環とは区別する。 　数100万年の時間では炭素は海洋に蓄えられないので、海水から取り除く手段を我々は考える必要がある。いくらかの炭素は新しい珪酸塩の生成の間にCO2を放出することで取り除かれるだろう（逆風化－Mackenzie and Garrels, 1966を参照）が、もっと多くは海底堆積物中に、生物遺骸のCaCO3としての埋没および有機物のCH2Oとしての埋没により取り除かれる（Berner and Berner, 1987）。河川により供給される以上の余分なCa2+が、玄武岩－海水反応（例えば、Holland, 1978）の間にMg2+との交換により海洋に加わり、これはMg珪酸塩の風化に由来して付加されたHCO3-（式4）をCaCO3として取り除くことを可能にしている。代表的な反応は： 炭酸塩の埋没に対して： 　　　　　Ca2+＋2HCO3-→CaCO3＋CO2＋H2O　　　　　 （6） 有機物の埋没に対して： 　　　　　CO2＋H2O→CH2O＋O2　　　　　 （7） 　式（6）からCO2の1モルが埋没するCaCO3の1モル毎に遊離されること、そして式（6）はCaCO3の風化を表わす式（１）の逆反応であることに注意せよ。結果的に、重炭酸塩が海洋に蓄えられなければ、炭酸塩の埋没と結びついた炭酸塩の風化の大気CO2に対する正味の影響はない。このことは、炭酸塩風化は数100万年の時間では大気CO2をコントロールする重要な要因ではないことを意味する。海洋でのHCO3-の貯蔵が、炭酸塩の埋没よりも風化が超越することにより起こり得るのは、1000年程度の時間においてのみのことである。我々はここで長期の地球化学的炭素循環のみを議論しようとしているので、大気のCO2と気候に影響する要因として炭酸塩の風化は無視することにしよう。 　上の反応は、最初にH?gbom（1894）により説明され（Berner, 1995参照）、のちにUrey（1952）により明快に表わされたように、簡潔な全反応の形で要約することができる： 　　　　　CO2＋CaSiO3→CaCO3＋SiO2　　　　　 （8） 　　　　　CO2＋MgSiO3→MgCO3＋SiO2　　　　　 （9） 　Ca炭酸塩およびMg炭酸塩の風化とは対照的に、ここではCa珪酸塩とMg珪酸塩の風化は大気から正味のCO2を取り除くことになることに注意せよ。大気CO2を長期的にコントロールする主要な要因は珪酸塩の風化であって、炭酸塩の風化ではない。また、Ca珪酸塩とMg珪酸塩の風化だけが重要である。この理由は、大陸で珪酸塩の風化により海洋へ付加されたNaとKは、NaとKの炭酸塩鉱物の溶解度が非常に大きいため、上の（8）と（9）に類似した反応によって炭酸塩と