労働金庫におけるリレーションシップバンキング.pdfVIP

日本金融学会2012年春季大会 労働金庫における リレーションシップバンキング 2012年5月20 日 岡山大学　三村聡 概　要 　協同組織金融機関一員である労働金庫、労働組合を主たる取引先とした職域金融機関と言われなが ら、それぞれ地域性を大切にした活動を展開してきた（労働金庫が持つ協同金融としてCommon Bond）。 近年で、退職者や一般勤労者、地域市民へ取引拡大が進むなか、金融庁指導により先送りとなったが、 全国合併本格的な検討・準備を進めることにより勤労者にとってより利便性高い金融サービス提供と、 かつ地域性を高める金融機関へ転換をめざしたところである。 　また、労働金庫リレーションシップバンキング対象金融機関とされてきたが、中小企業取引（法人企業 取引）になじみ薄い労働金庫にとって、金融審議会で議論が意図するリレーションシップバンキング「地 域密着型金融取組み」と趣旨・内容を必ずしも一にしてこなかった。ところが、2010年度から、改正貸金 業法が完全施行された最初年であることを踏まえ、「健全な消費者金融市場形成に向けた取組み」につ いても、地域密着型金融対象として、金融庁顕彰対象を含め積極的に取り組みが進められることとなっ た。こ観点から、地域や企業で働く勤労者や地域市民に対して、古くから多重債務者向け相談や教育活 動に力を入れてきた労働金庫が、地域密着金融強化面から機能する意義大きい。 　本報告で、まず2012年4月を目標に利用者利便向上を目的として「全国合併構想」を掲げた労働金庫 業界であるが、こ構想延期された。そ要因を金融庁見解（①全国合併により「地区」が会員や役職 員意識から消えた際コモンボンド（Common Bond）として「地域社会における絆意識」低下＝協同組 織金融機関として存在意義へ疑問、②系統金融機関（労働金庫連合会）を吸収した日本労働金庫が、 経営危機に陥った際対応能力、③規模経済性から全国合併コスト削減効果を生む可能性あるが、 合併により高コストかつ住宅ローン偏重体質改善せず、逆に規模拡大に伴うリスク管理が求められる、 ④労働金庫法改正が必要（そもそも単独機関法律でない）、これら諸点を指摘し、もって「時機尚早」と 判断を下した）を引用して検証する。 　次に、こうした状況を踏まえ、労働金庫が勤労者福祉金融機関として機能するため今日的な存在意義や、 規制緩和が進む金融界にあって労働金庫が直面する課題を分析しつつ、リテール領域がリレーションシップ バンキングに加えられた現状を踏まえ、今後、労働金庫果たすべき金融サービス支援強化・地域貢献（労 働金庫版リレーションシップバンキング）観点から、労働金庫が設立以来、受け継いできた協同組織として 「理念」を活かし、利用者たる勤労者や地域市民に対して有効に機能すべき方向性を示す。 日本金融学 2 労働金庫概要　（2011/9末現在） 金 庫 数 　　 13金庫 店 舗 数 653店 団 体 会 員 数 57,886団体 個 人 会 員 数 112,690人 間 接 構 成 員 数 9,997,747人 預 金 残 高 174,338億円 融 資 残 高 114,858億円