EU－韓FTA等韓国の貿易政策等が日韓自動車産業の競争力.PDFVIP

EU－韓 FTA 等韓国の貿易政策等が 日・韓自動車産業の競争力に与える 影響に関する調査研究 平成２３年３月 財団法人 国 際 経 済 交 流 財 団 委託先 株 式 会 社 現 代 文 化 研 究 所 この事業は競輪の補助金を受けて実施したものです。 http://ringring-keirin.jp/ 当該事業結果の要約 １．韓国自動車産業のグローバル化と今後の方向 韓国を代表する現代自動車グループ（現代／起亜）は、2005 年～2009 年、自動車産 業が世界的な危機に見舞われた時期も含めて、全方位的にあらゆる国の市場で販売を伸 ばしている。特に人口が多く市場成長余地が大きく、しかも高い経済成長を続けるBRICs やその他新興国、あるいは市場の潜在力は大きいが日本車の進出が相対的に弱い国で急 拡大を遂げている。 その進出手法は、①各市場の実情に合致した商品投入に努めつつ、自らが得意な、か つ他社より価格優位性のあるスモールとエコノミークラスのモデルを投入、②現地生産 車を当該生産国市場および近隣地域市場に投入して攻勢をかけるというもの。 同グループのこのようなグローバル躍進の最大の要因は、品質やデザイン力の向上に よる商品力のアップ、生産の合理化やシンプルなクルマづくりによって実現した価格競 争力の両立にある。そしてもう１つは、日本メーカーが進出しておらず競合がない新興 国へ大規模投資を行って一気に現地生産を拡大させたことにある。そこへウォン安の恩 恵や、リーマンショック以降に起きた新興国への需要シフト、高級車から低価格車への 消費者指向の変化といった市場環境の変化の時流に現代自グループのグローバル展開 が合致、更には米ビッグ 3の経営破綻やトヨタのリコール問題などの敵失による追い風 も吹いた結果といえる。 ２．韓国主要自動車メーカーのグローバル展開にみる成長要因 現代自グループの売上高は 2006 年以降、拡大基調で推移し、海外販売の寄与度も上 昇傾向が続いている。「世界的不況時こそシェア拡大のチャンス」とし、過去数年間の 好業績で蓄えた資金力を投入して、海外生産と販売の拡大を積極的に進めてきた。 成長の源泉は以下の要因による。①生産コストの低減。売上高に占める生産コストの 割合は、2009 年時点で、現代自グループ全体で 80％を切る。部品のモジュール化の加 速と、最適モデルの効率的供給のためにグループ内でプラットフォームを集約して開発 コストと期間の圧縮を進めた。②労組が無い系列の 1 次サプライヤーへのモジュール部 品生産の集中による人件費抑制努力。③手厚いマーケティング関連費用によるアグレッ シブなマーケティング活動。売上高増加とコスト低減による利益増加を見込んでマーケ ティング関連予算を毎年増やしている。④高品質と低価格を両立させる部品調達体制の 構築。品質認定制度と品質支援を通じて 1 次、2次サプライヤーの品質向上を図ると同 時に、最大の系列サプライヤー・現代モービス社を現地生産の際に一緒に進出させるな どして低価格高品質のクルマの提供を行っている。 ３．韓国の自動車産業政策の最新動向と通商政策 韓国政府の自動車産業政策の目玉は次世代環境対応車 EV の開発・普及支援である。 2009 年の HV グローバル販売でのシェアはトヨタ 68％、ホンダ 22％に対して、現代自 0.7％、起亜自 0.1％に留まる（韓国自工会調べ）。HV で技術的に日本に大きく遅れる韓 国では、政府が 2015 年に世界 EV 市場の 10％、2020 年に国内 EV 市場 20％のシェア確 保を目標に掲げ強力に支援している。また本調査の有識者ヒアリングを通して、政府の ODA政策や為替政策が韓国企業の輸出に対する間接的な支援となっている様子が把握で きた。政府は今後、企業ニーズに基づいて戦略的な ODA 政策を展開する方針だという