和服の脇縫い代に関する一考察.PDFVIP

〔東京家政大学研究紀要　第22集（2），p．121～127，1982〕 和服の脇縫い代に関する一考察 井上好・知野恵子・神田和子・藤本やす （昭和56年9月24日受理） （Received　September　24．1981） 代を作図により伸ばし率を算出し，実際縫製との関係を 緒 言 照合し検討する． 　和服は並幅の反物を用い，直線裁ちによる長方形の各 1　前縫い代の仲ぽし率の算出方法 部の布を縫製して一i定の形態に仕上げる．縫製途上にお 　前身頃の脇縫い代を肩山から身八つ口止りまでの間で いて縫い代を裁ち切ることなく縫い込みとして平らにな 身頃になじませるための伸ぽし率を算出するための作図 じませて処理を行なう． を図2によって示す．B点は身八つ口1トり，　A点は身八 　和服の寸法は体格に合わせて桁丈は肩幅と袖幅に分割 つ口止り（B）から肩山線に下した垂線の足，C点は肩 し，腰囲は後幅，前幅，柾幅に分割して寸法を定める． 幅点，じBは袖付げと身八つ口の寸法，CAは肩幅と後 　近年の女子は背が高くなってきた．これに伴って桁丈 幅との差，百百ノは脇縫い代，BLは脇縫いのきせ，　CK が長くなっているが，腰囲は割合に細めである人が多い， は身頃の袖付け縫い代とする． 肩幅と後幅との差を普通体型の場合には製作上2。Ocm　まず袖付けプラス身八つ口の寸法（BC）と肩幅マイナ とする．桁丈が長く腰囲が細いとその差が当然大きくな ス後幅寸法（AC）より肩山から身八つ口止りまでの寸法 る．差が大きくなれぽなるほど縫い代の処理は困難であ （AB）を（1）式により算出する． る．そこで今回は脇縫い代の処理を理論的に解明すると ともに，6種類の布を用い，袖付け・身八つ口寸法を一 β 定にし，脇縫い代を6．Ocm，肩1幅と後幅との寸法差を 2．Ocm，3．　O　cm，3．5cm　3．7cm，3．9cm，4．　O　cm，4．5cm， 5．Ocmの8種類に定めてその縫い代の安定について実 験的に検討したので報告する． 　　　　　　　　　　実験方法 図1　肩山でのβ量・身八つ口止りでのα量 　和服の身頃の袖付け線は肩幅と後幅との寸法差により B’ 斜線となる．この斜線を対称軸として縫い代を折れぽ， A’ A A C K 図1に示すように身八つ口［ヒりではα量縫い代がつれ， 肩山ではβ量縫い代にゆるみができるので縫い代が身頃 になじまない．縫い代を身頃になじませるためには，β 量を身八つ口の方向に移行させるとともに縫い代を伸ぽ E さなけれぽならない．そこで袖付け縫い代および脇縫い 図2　前縫い代の伸ばし率の算出方法 第一被服構成研究室・第三被服構成研究室 （121） 井上好・知野恵子・神田和子・藤本やす 　　短＝γ／砺2－6TA2……・・・………・・…………・…（1） A’