唐戸市場活性化に関する一考察.PDFVIP

下関市立大学産業文化研究所第17号 唐戸市場活性化に関する一考察 道盛 誠一・森 邦恵・杉浦 勝章 1．はじめに 2006年度所員共同研究として採択された3件のうち、本研究は産業文化研究所の運営委員会がコーディネー ターとして提案したもので、かってない異色の取り組みである。全国の地域づくりや地域興しの事例調査を行い、 類型整理を加えて特色ある取り組み事例を抽出することが本来の狙いであった。取り組みを具体的に検討する過 程で、中心市街地活性化に絞って検証を加えることとなった。 下関市は2005年に旧豊浦郡4町と合併し、広域の中山間地を擁する30万都市になった。従来から重要な課題で あった中心市街地の活性化に加えて、中山間地固有の課題も正面から取り組むことになったのである。旧下関市 の奥座敷として市を包むかのように広がる、豊な中山間地域と一体化することによって、下関がいちだんと奥行 きのある、新しい都市として再出発したのだと考えたい。このことに鑑みて、われわれは、本研究の持続・継続 的な推進に取り組むこととして、2006年度の調査・研究対象をさらに絞り込むことにした。単年度で明確な成果 を上げられるものとして、下関の中心市街地を対象に据えて調査を行うことにした。下関市における中心市街地 は、下関市の基本計画により定められている。下関駅周辺部から唐戸周辺におよぶ、国道9号線沿道の約230ha の地域である。商業地区に住宅地区も含む区域で、われわれは商業集積地に焦点を定めた。調査を行うことに よって、現下の課題をあぶり出そうと考えたのである。 シーモールを対象に据えるべきか、グリーンモールか、あるいは唐戸商店街か、唐戸市場か、それぞれに固有 の背景と経緯をもった場所である。全てを取り扱う取り組みは、参画してくれた教員スタッフの総合力から推す と不可能である。対象地の選定に踏み切る切っ掛けは、たまたまの経緯で唐戸市場研究部会からもたらされた。 唐戸市場研究部会とは、唐戸市場業者連合協同組合の関係組織で、唐戸市：場に出店する約140の業者のうち若手の 店主や後継者約40名が唐戸市場の長期戦略を練ろうと集ったものである。2006年の8月に発足したばかりの研 究会で、そこから協力を求められたのである。同研究部会がその活動を通じて課題の在り処に見当をつけたもの があり、その検証に寄与することもできる、と判断した。打ち合わせを重ねることによって利用者に対する対面 型のアンケート調査を実施することになった。 教育現場に携わるものとして、学生との協働を模索し、調査体験を通じて大学の立地する地域の課題に関心を 持って欲しいと予てより考えてきたのである。確かに、本学でも地域をテーマとする専門演習担当者は従来から そのような機会を学生に提供し続けている。しかしながら、それらはいずれも教員の個人的な取り組みにとどま る。われわれは、全学生を対象としたスタッフ募集を行うことによって、研究所の事業、すなわち全学的事業と して取り組むことを目指すことにした。研究所の活動を学生との協働で遂行することの試験的な取り組みとする、 と。 学生スタッフの募集は、主に専門演習担当教員を介して行ったが、反応がよかったとはいえない。研究所運営 委員がそれぞれの専門演習受講学生に働きかけて、3日問の調査に20名の学生の協力を得ることができた。慈な く調査を終えることができたのは、学生ボランティア調査員の諸君のおかげである。また、唐戸市場業者連合協 同組合、とりわけ唐戸市場研究部会のご支援とご協力がなければ、達成できなかった。深甚の謝意をささげる次 第である。 2．調査の内容 平成18年9月81ヨの閣議において、「中心市街地の活性化を図るための基本的な方針」が決定された。それによ ると、「中心市街地は、商業、業務、居住等の都市機能が集積し、長い歴史の中で文化、伝統をはぐくみ、各種機 能を培ってきた「まちの顔」とも言うべき地域である」、としている。 本調査は、中心市街地活性化の一例として、下関市における唐戸地域、特に唐戸市場の活性化について、来場 者である市民・観光客などの意見を参考にしながら検証する。 一15一 2．1調査の目的 唐戸市場に訪れる人々にはどのような