留学生の移動と受け入れに関する考察神戸大学人間発.PDFVIP

　　Kobe University Repository : Kernel 留学生の移動と受け入れに関する考察 : 神戸大学人間発 Title 達環境学研究科における 国人留学生アンケート調査結 果より Author(s) 奥山, 和子 Citation 神戸大学留学生センター紀要, 20: 21-38 Issue date 2014-03 Resource Ty e De artmental Bulletin Pa er / 紀要論文 Resource Version ublisher URL htt ://www.lib.kobe-u.ac.j /handle_kernel Create Date: 2016-01-19 神戸大学 21 留学生センター紀要　20：21〜38，2014 留学生の移動と受け入れに関する考察 ―神戸大学人間発達環境学研究科における中国人留学生アンケート調査結果より― 奥山　和子 キーワード：移動、プル要因、留学生受け入れ、グローバル化 １　はじめに 　神戸大学（以下、本学）には、2013年５月１日現在1132人の留学生が在籍してい る1）。これは全国の国立大学の中で10番目に多い数字である。また大学内において この数字は全在籍者数の6.8%にあたる。その中で、筆者が属する発達科学部および 人間発達環境学研究科（以下、本学部本研究科）には84人の留学生が在籍しており、 これは本学部本研究科在籍者総数から見ると5.4%にあたる。つまり、本学部本研究 科キャンパスでは100人の内約５人が留学生ということになる。その内訳をみると、 88.5%が中国人学生であり、しかも現在学部在籍生はいないため、全員修士課程あ るいは博士課程に在籍する大学院生もしくは研究生である。従って本研究科で留学 生という時、それは中国人の大学院生もしくは研究生を指すことになる。かれらは おしなべて日本語能力が高く、外見的にも欧米系留学生のように目立つ存在ではな い。しかし、かれらは日本国内外の他大学を終えた後、新たに本学を選んで移動し てきた人たちなのである。一体、かれらはどういう背景を持った人たちで、本学本 研究科のどこに惹かれ、何を求めてやってきて、そしてどこへ行くのだろうか。こ うした留学生の一連の行動を、何かのプル（引寄せ）要因に誘発された移動と捉え ることにする。そのプル要因が本研究科の場合は何なのか。それを調べるために留 学生にアンケート調査（以後、本調査）を実施した。本稿はその結果報告であると 共に、さらにそれに基づき、本研究科における今後の留学生受け入れに関して提案 を試みるものである。 　本稿ではまず、本研究科の留学生の位置付けと全体像をとらえ特徴を浮き彫りに するため、他部局の留学生データと比較する。次に、留学生が本研究科へ移動して 来た理由や背景を理解するためプル要因という視点からを考察する。そして最後に、 プル要因を踏まえたうえで、大学におけるグローバル化に関する議論は本研究科の 留学生対策と無縁ではないという立場から若干の提案をしたいと思う。 22 ２　人間発達環境学研究科の留学生 ２. １　留学生在籍状況の比較 　神戸大学に在籍するすべての学生の中で留学生が占める割合は6.8%である。これ を部局別に見ると、本研究科は、表１で示されているように留学生占有率が5.4%で、 占有率の高さでは全11部局の中で７番目に位置している。しかし、研究科を含めた 文系６学部2）（表１の中では下位６学部）に限ってみると最も留学生が少なく最下 位の位置づけというのが実情である。概して留学生の少ないキャンパスだといえる。 表１ 「在籍者の中で留学生が占める割合」（％）