カウンセリングにおけるreflectionの援助的効果につい.pdfVIP

カウンセリングにおけるreflectionの援助的効果についての研究 教育相談課 教育相談主事 嶋田 弘人 【要旨】 本研究（注１）では，単発面接の逐語録をもとに，カウンセラー応答を「reflection」 （注２）と「non-reflection」に分類し，これらの応答後のクライエントの体験過程 （注３）レ ベルを EXP （体験過程）スケール（注４）で評定した。その結果，「reflection」と「non-reflection」 は共にクライエントの体験過程を推進させる応答であるが，「reflection」の方がクライエント に評定不能応答を招きにくい応答であること，即ちクライエントの体験過程からズレること の少ない応答であるということが明確になった。 【キーワード】 reflection，non-reflection，体験過程，EXP スケール １ 研究の背景 が Gendlin のいう「体験過程の推進」であ カウンセリングでは傾聴されるだけで悩 ったのか，またその援助的効果はどのよう みや抱えている問題について整理がついた なものかについては不明確である。このよ りする。これはカウンセラーの応答により うに「reflection」の重要性は提唱されてい クライエントに内省が生じたからであると るが，その援助的効果についての実証的研 考えられている。この内省の過程は，個人 究はほとんどなされていないというのが現 が漠然とした実感（池見，1955）（※１）に 状である。 触れる過程と考えられ，この過程を （※２）は「体験過程の推 Gendlin （1964） ２ 体験過程と焦点づけ（Focusing） 進」と呼んだ。個人は体験過程の推進 （EXP 個人の内的変化は，個人の内面で行われ レベルの上昇）により内的変化が生じるも る「焦点づけ」の過程をみることで明らか のと考える。ここでいう内的変化とは，個 になる。「焦点づけ」とは個人が体験過程の 人に気づきが生じ，それが様々な状況に適 「実感」に注意を向けたときに生じる連続 用できる心理的状態に変化することである。 した過程であり，この過程は４つの位相か （※３）は体験過程を推 Gendlin （1996） らなる。４つの位相とは，位相（１）「心理 進する応答として「reflection （反射）」に 療法における実感」，位相（２）「ひらけ ついて言及している。Rogers は初期の時代 （Unfolding）」，位相 （３）「全面的な適用」， にこの応答を強調していたが，カウンセラ 位相（４） 「実感の移動」である。そして， ーの態度を重視していったため，この応答 個人が「実感」に注意を向け続けるとき， は次第にオウム返しという形式的な技法と この４つの位相に分かれるというものでは して一般に認識され，その本質が普及しな ない。「焦点づけ」における４つの位相の循 いまま重要視されなくなっていった経緯が 環は「体験過程の推進」時に見られる現象 ある。