谈话とテクスト.docVIP

『義理と人情』源了園　われわれが文,,,,作品に表れた「義理と人情」を検討しようとするとき、社会的事実の反映しての義理?人情と、作家が理想像として創り上げた虚構の義理?人情とを区別する必要がある。しかし後者を無意味とするのは、悪しき事実主義である。むしろ理想化された義理に、当時の民衆はそうありたいと言う自己の像を見た。それは日本人の心の深層を知る有力な手がかりと言えよう。　井原西鶴が義理の問題を取り扱った作品は、彼の EQ \* jc2 \* Font:MS Mincho \* hps14 \o \ad(\s \up 14(ぼうだい),厖大)な作品群のなかではわずかの量を占めるに過ぎない。が、義理の観念の歴史においては重要な文献である。　西鶴画はことさらに、当時としては古め貸し苦なりかかっている戦国時代の武士道における義理を描いた。彼は描いた武士たちの多くは、浪人であるとか、隠者であって、今を時めく官僚的な当世武士ではない。おそらく西鶴は、社会の実力者でありながら武士の風下に立たねばならない町人らしくあるように、武士が武士らしくあることを期待し、そのような武士を賛美したのであろう。　西鶴が『武家義理物語』で扱った義理のほとんどは、パーソナルな信頼し合っている人間同士に成立する情的紐帯、魂の呼応とても言うべきものである。　たとえば次のような物語。――同じ家中の少年七尾八十郎と大代伝之介は、あることから果し合いとなり、年長の伝の介のほうが検討たれた。その報告を聞いた八十郎の父親は、息子に向かって覚悟を言い渡し、「此ものそれにて、何やうにもおこころまかせ」との書状を添えて、相手の親のもとに送りつけた。伝の介の母親が、仇とばかり長刀を取って駆け寄るのを、夫の伝三郎を制して、自分の息子の代わりとして家に引き取った。これは、相手の「信頼にたいする呼応としての義理」を物語るものである。　また、次の物語。ある雪の深い朝、 EQ \* jc2 \* Font:MS Mincho \* hps14 \o \ad(\s \up 14(おぐり),,,,,栗)なる,,,,問ある武士が、備前の国（現岡山県）から、わざわざ京都の石川丈山を尋ねてきた。石川は教養の聞えの高い武士であるが、すでに世を捨てて隠栖していた。そして、彼は忘れていたのだが、月彼は岡山に行くという,,,,栗と別れるときに、一飯を差し上げたい、と約束したのであった。その朝はまさに約束の当日の朝であった。石川は素速に朝飯をつくり、,,,,栗はご馳走になるとすぐ「春までは備前にいる」お言い置いて、また旅立っていった。これは「契約に対する忠実としての義理」の例である。　こうした例を分析すれば、義理とは「名の義理」、つまり自分が信頼するに足りない人間と思われることに、最大の苦痛と屈辱を覚えるものであることが浮かびあがる。　この作品殻、もうひとつ例をあげる。――病気のために出陳できないで,,,,姓が、三人の同輩から嘲笑された。彼は手足が動くようになると、出陳の支度をしてさきの三人に果し合いを申し込み、彼らを突き殺し、そしてその死骸のうえで自害した。世の人々は、彼の遺書を見て道理至極と思い、彼を惜しんだ。　この,,,,姓の行為は、後代の目から見ると、自分の個人的な名誉のための行為に過ぎず、主君に対する義理を欠いた行為のように思われる。しかし、当時の人も西鶴も、これを義理にかなった行為と看做している。自分の名を守らないように人間は、主命を果たすに価しない人間であった。　近松門左衛門は、普通「義理と人情」の対立?葛藤を描いた劇作家と言われる。しかし彼のライトモティーフは、むしろ愛の純粋さと情けの美しさを描くところにある。彼の初期の作品では、『曽根崎心中』に見られるように、恋愛が妨げられるとこは、愛がたちまちに死に向かって激情的に高まっていくことになる。そこにはたまらない悲しみはあっても、なんら罪悪感をも伴わない。しかし、やがて彼の作家としての年輪がますに連れて、激情はしだいに沈潜し、愛の賛歌は時とともに沈鬱の調べを帯びてくる。そして世俗的?社会的な要素、世間への配慮が作品の中に浸透してくる。　心中ものを見ても、初期の作品の主人公は若い男女であるが、晩年のものでは、『心中天網島』の治兵衛は二人の子もち、『心中宵庚申』のお千代は三度目の結婚、と言うように、人物それ自体が無条件に死を賛美するわけには行かない主人公が選ばれている。また、彼の中期以後の作品からは、人生の苦労に耐え抜いた人物が EQ \* jc2 \* Font:MS Mincho \* hps14 \o \ad(\s \up 14(わきやく),傍役)として出てきて、彼の作品を奥行きの深いものにしていることも見逃せない。　そして興味深いのは、義理と人