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『命の格差は止められるか』 イチロー?カワチ (著) 小学館，2013 年 ISBN ：9784098251742 2014 年8 月号 No. 167 購入手続き中 私のすすめるこの１冊 私のすすめるこの１冊 小林 稔 （教職キャリア高度化センター 教授） 『命の格差は止められるか』（小学館101 新書） イチロー?カワチ （著） 著者イチロー?カワチ（現ハーバード大学教授） 視点が盛り込まれています。 氏は、父親の仕事の関係で12 歳の時にニュージーラ 他にも、普通は幼児期のスパルタ式教育を批判的 ンドに移住し、その後オタゴ大学医学部を卒業し、 な目で見てしまいがちですが、本著では過去に米国 当地にて内科医として勤務されておられました。 で実施された２つの黒人に対する縦断的介入研究 1992 年にはハーバード大学公衆衛生大学院に移ら （ペリー就学前プロジェクトとアベセダリアン?プ れ、現在の職に就かれています。ご専門は「公衆衛 ロジェクト）を事例に、幼児期にスパルタ式で基礎 生学?社会疫学」であり、この本においても、定量 学習を叩き込んだ子どもの、成人期以降における「健 的なデータをもとに、説得力のある内容で、話を展 康度」や「経済的豊かさ」に関するポジテイブな結 開されておられます。特に、経済格差が健康格差に 果と見解、すなわち、スパルタ式の教育を受けた子 結びつくこと、さらには、健康にとって最も大事な どもは、そうでない子どもに比べて喫煙率が20％以 要因として、ソーシャルキャピタル（社会における 上低下していたり、一定の収入を得ている率や持ち 人々の結束により得られるもの：社会関係資本）を 家率が高かったりする等の結果を報告しています。 挙げている点が特徴と言えるでしょう。長寿を実現 普段、教育学や心理学分野にどっぷり浸かっている するには、格差の小さい社会で「人々の絆」や「隔 者にとって、社会疫学者が伝えるこの種の「教育」 たりのない社会」が重要であることを指摘すること への提言が新鮮に映ることでしょう。また、一般的 に加えて、格差が広がりつつある日本の現状を憂い、 に社会格差や経済格差を取り上げた話は、政治的な 今が格差縮小を取り戻す大事な時期であると説いて 方向に走ってしまいがちですが、そうではなく、デ います。もちろん本書では、「健康」に関する話題が ータに基づいて客観的に淡々と健康や長寿に関連さ 中心ですが、著者は教育にも大変関心がおありで、 せながら著している点が本書をお薦めする理由の一 例えば、教育への投資効果を年率 17％と数値化した つでもあります。 り、幼児期に「我慢強さ」を学ぶことが、成長して 以前私が住んでいた沖縄に、著者は講演やご自身 からの誘惑に負けない自己抑制能力の獲得につなが の研究のためちょくちょく来られ、地元の研究者と ったりすると述べています。この自己抑制能力は、 は気さくにバーベキューなどで交流を深めておられ 健康上きわめて重要で、身近なところでは、喫煙や