東京女子医科大学心臓血管外科.pdfVIP

●研究所めぐり 東京女子医科大学心臓血管外科 山田有希子，山崎健二 Yukiko YAMADA , Kenj i YAMAZAKI が自宅療養可能となっている。研究開発にあたっては，こ 1.　はじめに れまでの協力施設はポンプ開発，特殊コーティング技術， 当科は1955 年に国内初の心臓病専門施設として開設さ 性能評価システム等，多岐の分野にわたり，国内の最先端 れた。これに先駆けて195 1 年には本学において国内初の 技術の集積と言える。特に，当科と早稲田大学理工学部と 心臓手術が行われ，以降は心臓病の診断と治療において世 の連携は40 年前の人工心臓開発初期にまでさかのぼり，前 界水準の成果を挙げ，累計3 万件を超える国内最大の手術 述したTWIns の設立によって，現在も様々なプロジェクト 実績を有する心臓病センターとなった。 が進行中である。ポンプ機能を主としている心臓の理解や 研究面では，多くの諸先輩方が診療を行いつつ医療技 研究には理工学の知識が不可欠であり，また若手心臓外科 術の発展にも重きを置き，多くの研究成果を重ねてきた。 医の修練としてもよい刺激となる協力体制が受け継がれて その中で，2002 年には再生医療による自己組織血管を先 いる。 天性心疾患手術に応用し，また2005 年には当科教授の 再生医療分野では，すでに新岡俊治先生（現Yale 大学）ら 山崎健二を中心に開発された植え込み型次世代補助人工心 が考案したtissue-engineered graft （図2）をはじめとし，現 臓EVA HEA RT の臨床治験を開始した。2008 年3 月には東 在は東京女子医科大学先端生命医科学センターとの間で， 京女子医科大学 ?早稲田大学連携先端生命医科学研究教育 実際に大学院生が行き来しながら心筋細胞シートの臨床応 施設（通称 ：TWIns）が誕生し，開かれた医理工融合の拠点 用に向けた協力体制が築かれつつある。 として益々の研究発展が期待されている。 また当科では，人工臓器分野，再生医療分野を中心に， ’ 米国のPitt sburgh 大学，Yale 大学やChil dr en s National 2 .　特　徴 Medical Center （Washington D.C.）等に留学し，精力的に研 補助人工心臓EVA HEA RT （図1）は当科山崎健二により 究に携わる臨床医も多く輩出している。 1990 年に考案され，早稲田大学理工学部の故 ?土屋喜一先 3 .　研究紹介 生，梅津光生先生（生体工学），太田英輔先生（流体力学）， 富岡淳先生（摩擦工学），岩?清隆先生（生体工学），東京大 心尖部脱血管を持つ補助人工心臓において，脱血管外周 学工学部の石原一彦先生（抗血栓性材料），東北大学医学部 と左室壁との間に形成されるwedge thrombus が心源性血 の山家智之先生，白石泰之先生（長期動物実験），米国 栓塞栓症を引き起こす問題を常に抱えている。我々はこの Pit t sb u r g h 大学，株式会社サンメディカル技術研究所と 解決策として，自己の新生内皮でその周囲を覆う再生医療 の共同研究を経て開発された。2005 年より治験を開始 的手法を応用した脱血管を開発した。これは，チタンメッ し1) ～3) ，2009 年8 月現在までに3 名が心移植に到達，15 名 シュを脱血管周囲に巻くことで自己の新生組織を誘導する も