自然神人间それから.doc

PAGE 22 第二部　 続?忍び寄る異変 ２．１．５　ニュージーランド ヨーロッパだけでなく、ヨーロッパ諸国の植民地、オーストラリア、ニュージーランド、アルゼンチンなど世界中の森も破壊の例外ではない。ニュージーランドの南島は南北に縦断するマウントクックを主峰とする山脈で東と西に分かれ、東側はなだらかな平野になって、かつては豊かな森林に覆われていた。しかし、今は見渡す限りの森林は徹底的に破壊され牧場になり、人口の１０倍以上の羊が飼われ酪農はこの国の主な外貨収入源になっている。冬季には牧場は荒涼とした赤茶色の半砂漠に変わる。それと比べると、牧畜に適しない、狭い傾斜が急な国立公園が多い西部山岳地帯では森林の緑が多く、東西を横断すると変化は際だち森林破壊の状況がよくわかる。ニュージーランド政府は南島の牧畜に適しない僅かのこれらの山岳地帯や南端のフィヨルドランド地方に残る自然を大切に保存しあたかも国全体が緑であふれているかのように誇大な環境宣伝を行い、大勢の観光客を日本から呼んでいる。しかし、このような森林破壊はこの国では問題にならない。この様な大規模牧畜には莫大な化学肥料、農薬が使われているし、羊の排泄物などによって海洋はひどく汚染されるであろう。現在、この汚染が顕在化しない理由は、南半球には陸地が少なく人口も少ないので、汚染からの回復力が大きいからであろう。先進国は自分たちの利益のための破壊には、当然の既得権益として目をつむっている。しかし、これは余りにもひどい白人たちのエゴである。地球の緑化運動はまず先進国から始めねばならない。 ２．１．６　オーストラリア ◎　ケアンズ ２００２年の夏、オーストラリア東北部の熱帯雨林地帯を愉しむのを目的としてケアンズに着いた。早速北に向かって長い間車で走っても待望の森林はなかなか現れず、目に入るのは車を取り囲むものは砂糖黍畑ばかりである。マザマザと見えるのは白人移民の手によって進行している自然破壊の現状であった。ここQueens Land州は、オーストラリア大陸東北部に角のように北に向かって突き出た半島である。半島の地層は大変古く２億年前にオーストラリア大陸が南極大陸から離れ、スンダランド大陸に接近し始めた頃からのものである。アボリジニが住んでいた熱帯雨林は火山爆発、地震、記録に残る最高風速毎時２６０キロの熱帯性ハリケーンなど幾多の天変地異を乗り越えて、１９世紀の白人移民まで殆どそのまま生き残った。半島の東海岸に沿って海抜１０００ｍ程度の山脈が南北に走っている。この山脈の東側には東からのモンスーンに乗って運ばれる水蒸気が山脈に遮られて雨になる。年間平均降雨量一万ミリメートル、最高記録２万ミリメートルを越えるという世界有数の多雨地帯である。この地域には二億年前からの生物の進化を印した数万種にのぼる樹木、灌木、草、シダ類、苔、バクテリア、哺乳類、爬虫類、鳥類、昆虫などのあらゆる生物が生息していた。ケアンズの北約１５０キロにある小規模のDeintree Rainforest National Parkでは激しいスコールの大粒の雨滴は数十メートルの高さに茂る樹木の頂上の葉に降り注ぐが、生い茂る葉に砕け散り、地上に達する頃には霧になってしまう。温帯地方の森林と違って、地面が見えないほど無数の植物が密生し、足を踏み入れる余地は全く無い。樹木だけで三千種位あると云われ、今でも毎年数種類の新種が発見されている。哺乳類と鳥類の狭間にある単孔類の「カモノハシ」は今でも人家の近くの川に生息している。この地帯には１９世紀まで、起源が今でも分からない、ポリネシア人とは明らかに違う人種である原住民が住んでいた。この原住民は固有の言語を持ち、豊かな森林の幸と、Great Barrier Reefと海岸線に挟まれた穏やかな海の幸に恵まれ、独特の儀式で自然を崇拝し幸せに暮らしていた。 その後この豊かな森の悲惨な自然破壊が１９世紀に始まった。１９世紀初頭に金、銀、オパールなどの宝石?貴石が発見されると狂気の採掘競争が始まった。英国政府は労働力を補うために立ち小便などの軽犯罪で捕まえた罪人を英本国から流刑地オーストラリアに送り込み、貧困ホワイトの移住を奨励した。森は荒らされ、膨大な富はロンドンに持ち帰えられた。アボリジニ原住民から土地を奪い奴隷化し、その人口は白人侵入以前に比べ１００年間で十分の一以下に激減した。現在、彼らは法律上の差別はないが、社会的には極めて酷く差別され、彼らの文化は絶滅寸前である。 HYPERLINK javascript:; ２０世紀に入り金の埋蔵量が減り採算ベースを割 HYPERLINK javascript:;  HYPERLINK javascript:; ったので、その