行政経営研修会報告書.doc

「札幌市における ニューバブリックマネジメント導入のあり方について」 札幌市役所?行政経営フォーラム 　は　じ　め　に 　ニューバブリックマネジメント（以下「ＮＰＭ」という。）は，欧米で発祥した新たな公共経営に関する革新的な運営理論である。 　この考え方は，わが国の地方自治体の改革にも広く取り入れられている。具体的には，成果を志向した行政評価，民間企業を活用した新たな公共事業手法であるＰＦＩ，そして，企業会計手法を用いた公会計改革などに生かされている。 　本市においてはいずれの手法も導入を進めているが，グループの12年度のテーマとして，ＮＰＭを進める上で最も大切なナレッジ?マネジメント，行政評価にも応用可能なＡＢＣ分析，そして新たな多元的な評価システムであるバランススコアカードを取り上げて研究を進めた。また，グループの研究を広く職員間に共有するため，行政経営研修会を実施し，研究課題の基礎的な知識の習得を目指した。 　この報告書は，これらの研究と研修会の成果をまとめ，本市におけるＮＰＭ導入にあたっての課題と方向をまとめたものである。職員各位の参考にしていただければ幸いである。 １　ニューパブリック?マネジメントとは何か ＮＰＭの特徴 NPMの核心は，「民間企業における経営理念?手法，さらには成功事例を可能な限り行政現場に導入することを通じて行政部門の効率化，活性化を図ることにある」大住荘四郎「ニュー?パブリックマネジメント」（日本評論社，1999年１2月）ｐ１より。 また，①現場の管理者に権限を委譲した柔軟な組織運営を図る，②市民を顧客とみなして，その満足を高めることを基準にした業績?成果を測定する，③測定して評価した結果は市民に公表するとともに意見を聞きながら組織の意思決定に反映する，④より少ない行政資源（人，モノ，お金）の投入により行政サービスの効率性，有効性を向上させることなどの特徴が挙げられる。 具体的にイギリスの事例を挙げて，ＮＰＭの実際を紹介する。 まず，ポイントの第一は競争原理である。これは，競争によりコスト削減などの効率性の向上が図られるとして，行政サービス部門を分権化，分散化することにより擬似競争状態を作り出すこと，また，民間企業と市場での競争を行うことが挙げられる。サッチャー政権は，地方自治体の一定のサービスに，民間業者との競争を義務付ける制度で，競争に負けると事業は廃止される強制競争入札制度を導入した。この制度は厳しい競争原理に基づいている。 次に，企画立案の執行部門の分離する権限委譲が挙げられる。具体的な施策としては，エージェンシーがある。これは，日本の独立行政法人の基になった制度で，政府の執行機能を独立した政府機関に委譲することにある。民営化の次善の策と位置づけられる。目標達成方法の評価?選択が独立して決定できる，機関内部の指導者?責任者を決定できる，行政における顧客の概念を導入しているの3点がその特徴である。 3点目は，行政の業績?成果を常に念頭において管理することにある。行政評価は実際に成果を志向して行政の業績を評価する手法である。イギリスのベスト?バリューも行政評価の一形態で，一口に言うと，地方自治体の業績を評価?監視して，効率性とともにサービスの質的な向上を目指す政策である。 このように，ＮＰＭは「競争原理の導入」「権限委譲」「成果志向」の３つのポイントから下図（図表１－１）のとおり整理できる。 ■図表１－１　ＮＰＭの原理と適用事例 競争原理の導入 競争原理の導入 権限委譲 成果志向 分権化?分散化による擬似競争状態の創出や民間企業との競争 企画?立案部門は，組織全体の整合を考えて決定。執行機関は，業務単位に権限委譲 業績?成果に基づく管理手法を導入する。 《ポイント》 《内　　　　容》 《具　体　例》 ●強制競争入札 ●エイジェンシー化 ●行政評価，ベスト?バリュー ＮＰＭに必要な視点 　　　　　　　■図表１－２　ＮＰＭの視点 目標達成のために権限をもった部門が，効率性分権化 効率性 分権化 意識改革 ニュー?パブリックマネジメント ＮＰＭは，効率性の追求から出発しているが，同時にプロセスの民主制と透明性を確保しながら，成果に対する市民へのアカウンタビリティ(説明責任)を果たすことも重視しているのが特徴として挙げられる。 また，組織内においての分権化や組織改革?意識改革があってはじめて機能していくものである。さらには，サービスの効率性ばかりではなく，サービスの質，市民満足を重視した経営管理の考え方に変化しているのが現状である。 これは，本市が取り組んでいる行政マネジメント改革に通じるものである。得てして，わが国はツールの一部を取り上げて，背景を理解しないまま導入する傾向にある。したがって，改