02论文佐々木高成-国际贸易投资研究所（ITI）.PDFVIP

論 文 海外 RD 活動に関する日本企業と 欧米企業の特徴と差異 佐々木 高成 Takanari Sasaki (財) 国際貿易投資研究所 研究主幹 企業の RD 活動の国際化に関して政策的な関心から、あるいはビジネ ス戦略上の関心の高まりから多くの調査が近年行われてきており、例えば UNCTAD の2005 年 World Investment Report はRD 国際化を取り上げて分 析している。同レポートにおいて UNCTAD は多国籍企業に対してアンケ ート調査を実施しているものの、残念ながら多国籍企業の RD を企業の 本拠地別に横断的に分析しているのは少ない。また、英国貿易省(DTI)が 作成している多国籍企業の RD に関する年次調査(注１)も多国籍企業の 本拠地別の分析は行っていない。また、本拠地別のデータを含む最近の調 査は存在するが、これらは欧米企業中心で日本企業との対比は無い。逆に 日本企業を対象に実施された調査では欧米企業との対比はなされていな いという問題がある。従って、上記の比較分析のために欧米企業と日本企 業を対象にそれぞれ別に行われた最近のアンケート調査結果を比較する 方法を取ることとする。厳密性からいえば本来は同一手法に基づく同一調 査を欧米企業と日本企業を対象におこなうべきであるが、上記の比較によ RD 活動関する日本と欧米企業の差、特徴について鳥瞰的、大局的 り、 把握を試みるものである。 本稿では RD の国際化や海外 RD 拠点設置の目的や立地要因につい て欧米および日本企業の違いを比較分析する。分析に当たり、①日本企業 と欧米企業で違いがあるとすれば、それはどのような要因に基づくのか、 ②中国、インドという新興経済大国での RD 拠点は企業にとって先進国 ●季刊 国際貿易と投資 Winter 2006/No.66 http://www.iti.or.jp/ 海外 R＆D活動に関する日本企業と欧米企業の特徴と差異 の拠点と比べ違いがあるのか、等を明らかにする。 欧米企業の RD 拠点に関する調 ているのか、日本と欧米で違いは 査のうち、本拠地別の分析可能なデ あるか ータを含むものには以下の調査があ ②海外 RD 拠点の設置について る。これらは①全米科学アカデミー ・本国と海外と比較して、本国は がジョージア大学に委託して行った 減少しているのか 多国籍企業の RD 拠点に関する調 ・海外では先進地域と途上国では 査(以下 「NAS 調査」と略す)(注2)、 増加のスピードに違いがあるの および②ブーズ・アレン・ハミルト か ンと INSEAD による共同調査(以下 ③海外 RD 拠点について本国と途 「BAH ・INSEAD 調査」と略す)(注 上国との違い 3)である。 ・研究活動のレベルや性格の違い ・重視する拠点設置要因、目的の 日本企業の海外 RD 活動につい 違い て詳細なデータを含む調査としては、 ①財団法人産業研究所「東アジアの なお、上記のアンケート調査にお 投資・資金調達環境と我が国企業の いて、RD の定義は特に与えら