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カ ナ ダ 移 民 政 策 の 歴 史 （下） ―移民政策策定のプロセスとメカニズム― 村 井 忠 政 目 次 は じ め に Ⅰ第二次世界大戦前の移民政策 ①コンフェデレーション以前 （1497 年－1867 年） ②自由渡航時代 （1867 年－1896 年） ③シフトン時代とカナダ西部開拓期 （1896 年－19 14 年） ④第一次世界大戦期と復興期 （1914 年－1929 年） ⑤大恐慌期 （1929 年－1938 年） ⑥景気回復期と第二次世界大戦期 （1938 年－1945 年） ＜以上 10 号掲載分＞ Ⅱ 第二次世界大戦後の移民政策 ⑦第二次世界大戦後の好況期 （1945 年－1962 年） ⑧ポイント・システム導入期 （1962 年－1976 年） ⑨1976 年移民法導入期 （1976 年－現在） む す び ＜以上本号掲載分＞ Ⅱ 第 二 次 世 界大 戦 後 の 移 民 政 策 ⑦ 第二次世界大戦後の好況期 （1945年－1962年） 戦後の移民政策を左右した二つの要因 第二次世界大戦後の好況期は第二次大戦終了の年 （1945年）から始まり、1962年に新しい移民 法が制定されるまでの約 15年間である。第二次世界大戦後のカナダの移民政策に最も重要な影響 力をもっていたと思われる要因としては、次の二つの事実をあげることができる。 第一の要因は、1946年から1962年まで戦後のカナダで好景気が続いたという事実である。カ ナダの国内では鬱積した戦時中の倹約生活が戦後になって消費物資の需要を生み出し、拡大した 軍需産業を平和時の体制へ変えることを大いに助けた。同時に、イギリスおよび西ヨーロッパの 復興のための軍需は、カナダの農場や工場からの生産物にとって、市場を開くことになった。資 本と労働力が不足するかもしれなかったので、それを避けるために、双方を外国から補給しよう とした。イギリスとヨーロッパからは再び新たな移民の流れがこの国に注ぎ込まれた。合衆国か らは巨大な直接投資が流れ込んだ。これらの要因すべてが、再生したイギリス系ナショナリズム を伴って、1950年代の急上昇の繁栄を生み出したのである。1 1970 年代初頭まで続いた戦後カナダ経済の好況によってカナダの移民政策は大きく影響され ることになる。石油や天然ガスなどの地下資源や製造業部門に対する大規模な民間投資が行われ、 都市基盤や産業基盤の整備や大学をはじめとする教育機関に対する政府の公共投資が戦後の消費 者の需要の高まりと結びつき、この時期のカナダは経済的繁栄が長期にわたり継続した。この結 果、カナダのGNP は 1939 年の57 億 ドルから1962 年の360 億 ドルと飛躍的な伸びを示してい る。1958 年までの失業率を見ると、2.8％から5.9％の間を上下しており、この間の実質所得は倍 増している。このような好況の持続はおよそ30 年間におよび、これによってカナダ国内の熟練労 2 働者も不熟練労働者もともに不足し、本格的な移民政策が開始されることになる。カナダへの移 民の流入が戦後の好況期において急激な伸びを示していることは統計数字を見れば明らかであり、 1 とりわけ1951 年から1953 年までの顕著な移民受入数の伸びは、カナダが新しい移民政策を採用 したことを反映していると考えられる （図１参照）。 図１ カナダへの移民の推移 （1945年－1970年） 典拠 ：ImmigrationStatistics,Departments of Citizenship and ImmigrationandManpowerand