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チンパンジーの子育てから学ぶ 第63回公開シンポジウム チンパンジーの子育てから学ぶ ◆プレゼンター 竹　下　秀　子 滋賀県立大学人間文化学部教授/発達心理学・比較行動発達学 ◆パ ネ リ ス ト 細　辻　恵　子 甲南女子大学人間科学部文化社会学科教授/家族社会学 ◆司　　　　会 一　色　伸　夫 甲南女子大学人間科学部総合子ども学科教授/子どもメディア学 一色：それでは、第63回子ども学公開シンポジウムを始めます。本日は「チンパンジーの子育てから 学ぶ」をテーマで考えていきたいと思います。人間とチンパンジーは同じ祖先から進化してきたこと は、よくご存じのことだと思います。道具の使用や社会関係の豊かさなどよく似たところがたくさんあ ります。そういったことを竹下先生からお話していただきます。今回は、赤ちゃんが発達していく道筋 やお母さんがどのように子育てをしていくのかを、チンパンジーと人間の赤ちゃんを比較して考えてみ たいと思います。母子の関わりの重要性や育て方のユニークさが、実はチンパンジーの子育てを見る ことによって見えてくるのです。本日の基調講演のプレゼンターをしていただく先生は、滋賀県立大学 の竹下先生です。先生は京都大学をご卒業され、現在は滋賀県立大学人間文化学部教授で、赤ちゃ んのことを総合的にいろいろな角度から研究したり、赤ちゃんを育てている人と連携をしたり、日本 赤ちゃん学会の評議員もされています。来年の春には、赤ちゃん学会の第９回学術集会の大会長もさ れるご予定です。竹下先生は、京都大学霊長類研究所の共同利用研究員として霊長類の比較行動発 達研究に従事されて、例えばオランダのバーガース動物園、ベルギーのプランケンデール動物園で集 団飼育のチンパンジーとボノボの比較研究をされたりしています。現在、胎児期からの比較発達基礎 研究と地域子育て支援を結ぶ、滋賀県立大学子どもの未来応援プロジェクトも展開されています。で は、早速、竹下先生お願いします。 竹下：ただいまご紹介いただきました竹下秀子と申します。よろしくお願いいたします。本日は、スラ イドを見ていただきながら、チンパンジーの子育てから学ぶというテーマでお話いたします。既にポス ターで紹介くださっていますように、チンパンジーのお母さん、赤ちゃん、そして、人間のお母さん、赤 ちゃん、それぞれに共通した、またそれぞれに違った面白い特徴があります。それらをご紹介しつつ、 チンパンジーの子育てから学んで、何が、私たちが自分自身を理解する上で重要なポイントとして浮か び上がってくるのかを、皆さんと一緒に考えていきたいと思います。 　まず、チンパンジーとヒトはともに霊長類の一種です。現在地球上には、霊長類が約200種存在し、 熱帯、亜熱帯を中心に幅広く分布しています。さまざまな種が生活しているわけですが、共通する特 Copyright (c) 2009,Child Research Net and International Center for Child Studies (Konan Womens University), All right reserved. −− 145145 −− 徴は何でしょうか。ヒトやゴリラなどの一部の種を除くと木の上で生活していますね。これは、すぐに 皆さんも思い浮かべていただくことだと思います。さらにまた重要な特徴は、群れを作って生活するこ とです。社会生活、お互いのいろいろな関わりにおいて非常に複雑な関係を結び、その社会生活を行 うために高度な知性を発達させている哺乳類の仲間、それが霊長類です。霊長類は木の上で生活す るために必要な身体を持っています。木の幹を掴んだり離したり、そのようなことに役に立つ５本の指 を備えた手足を持っています。そして、さらに、森の中でいろいろな美味しい食べ物を効率よく見つけ るために視覚が非常によく発達しています。立体視、つまり３次元空間をしっかりと捉えることのでき