厚生労働科学研究费补助金（难治性疾患克服研究事.PDFVIP

厚生労働科学研究費補助金（難治性疾患克服研究事業） 平成20年度～22年度　総合研究報告書 稀少難治性皮膚疾患に関する調査研究 研究代表者　岩月啓氏　岡山大学大学院医歯薬学総合研究科　皮膚科学分野　教授 　研究要旨　天疱瘡、表皮水疱症、膿疱性乾癬（特定治療研究対象疾患）と魚鱗癬 様紅皮症（難病克服研究事業対象疾患）の４疾患群について、１）臨床疫学統計、２） 遺伝・病因的調査、３）病態解明、４）診断・治療法開発、５）生体試料収集・管 理と、６）診療支援と情報公開・啓発と診療手引書刊行に関する直近3年間の研究 成果と、今後の研究展開について概要を述べる。 １）臨床疫学統計：全国調査と症例レジストリ 　　臨床調査個人票を用いた疫学統計を継続し、受給対象３疾患（天疱瘡、表皮水 疱症、膿疱性乾癬）の年次報告を行った。魚鱗癬様紅皮症の一次、二次全国調査 を実施した。臨床調査個人票の改定案を作成した。Webによる症例レジストリ と追跡調査を順次実施し、生体試料ともリンクさせたデータベースを構築中であ る。 ２）遺伝・病因的調査 　　天疱瘡では疾患感受性HLA解析と家族発症例の解析を行った。表皮水疱症で は、遺伝型／表現型解析データを蓄積し、国際分類提言に参加した。膿疱性乾癬 や乾癬の免疫制御に関わる遺伝子多型解析やマイクロサテライト解析を実施した。 魚鱗癬症候群の遺伝型／表現型解析のデータを集積している。 ３）病態解明 　①天疱瘡：天疱瘡抗原の成熟型デスモグレインの蛋白解析と、病因性抗原エピトー プおよび病因性自己抗体解析が、新規ELISA診断キット開発として結実した。 天疱瘡抗原特異的マウスT細胞クローン樹立と病態への関与を解析した。自己 抗体産生を許す中枢性免疫寛容の破綻をAireノックアウトマウスにて解析し た。腫瘍随伴性天疱瘡抗体の抗原p170タンパクがA2ML1であることを確認した。 　②膿疱性乾癬：炎症の機軸としての樹状細胞の活性化、炎症増幅としてのPAR2 活性化、S100蛋白とRAGEを介するシグナル系、CTACK/CCL27発現パターン、 および核内レセプターLXRやビタミンD3代謝系を介する角化と炎症の連鎖に ついて研究を進めた。 　③表皮水疱症：根治的幹細胞治療を目指して、モデルマウスを用いて幹細胞動態 と表皮細胞への分化を証明した。骨髄細胞中のc-kit陰性／PDGFRα陽性細胞 分画が多分化能を有し、Ⅶ型コラーゲンを供給することが判明した。本症にお ける全身性アミロイドーシスや腎・造血系合併症の病態探究を行った。 　④魚鱗癬様紅皮症：魚鱗癬の角層形態・機能異常を解明するために、角層細胞接 着因子の分解過程と、オートファジー機序を解析した。水疱型の変異ケラチン Ｋ１を導入した細胞におけるサイトカイン産生と皮疹形成機序を解析した。 ４）診断・治療法開発 　①天疱瘡：診断基準と重症度基準の改訂病因抗体価を評価し、より正確な治療指  針となり得る改良ELISA法を考案した。天疱瘡および類縁疾患の血清学的診 断拠点としての役割を果たした。高用量免疫グロブリン療法を導入した。抗 CD20抗体（リツキシマブ）療法の臨床試験プロトコールを完成させ、次期研 究班にて実施する。 　②膿疱性乾癬：血清S100A8/A9、YKL-40などの生物活性マーカーの臨床検査意 義を解析した。TNFα阻害薬を組み入れた診療ガイドライン作成し、使用例 の検討を実施している。新規治療法として、顆粒球除去療法の有効性を解析中 である。 　③先天性表皮水疱症：遺伝子治療戦略として、三次元培養皮膚にレンチウイルス ベクターを用いた遺伝子導入を検討した。骨髄移植療法の導入を検討するため に臨床プロトコール作成を開始した。骨髄間葉系幹細胞移植療法を倫理委員会 承認のもとで臨床試