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東海大学大学院経済学研究科 Working Paper No. 2005-03 2005 年5 月18 日 初等教育における少人数教育の経済評価 ～仮想市場法(CVM) を使った計量モデルによる検証～ 東海大学政治経済学部助教授 川 崎 一 泰 kazu@keyaki.cc.u-tokai.ac.jp 要 旨 昨今の、地方分権と規制改革の流れの中で、義務教育のあり方が議論される中で、義務 教育である初等教育に関する政策評価を行うことが急務となっている。本研究では、「ゆと り教育」、「義務教育の国庫支出金削減」などの初等教育をめぐる諸問題に対して、改革手 段のひとつとして検討されている少人数教育を対象に、経済学的な評価を行う。また、し ばしば、先行研究で少人数教育の重要な課題として指摘されてきた教育成果の配分が、公 平性の観点からも支持できるものであるかどうかを実証的に評価する。 政策評価の手法としては、環境分野等でしばしば用いられる仮想市場法(Contingent Valuation Method ：CVM) の考え方を教育分野で適用し、そこから得られたデータをもと に、仮説検証することとした。この実証分析の結果、先行研究で指摘されていた規律や能 力の低い子たちへのマイナスの効果は観測されず、少人数教育が支持される結果となった。 この点から、受験競争や学級崩壊等の教育現場で起こっている課題に対して、教育内容や 授業時間の量的な緩和で解決を図ろうとするのではなく、少人数教育のようなきめ細かな サービスが求められていることが明らかとなった。また、サービスの多様化に伴う規制改 革もあわせて必要であることが示唆された。 Keyword ：教育需要、WT P、ゆとり教育、初等教育 初等教育における少人数教育の経済評価※ ～仮想市場法(CVM) を使った計量モデルによる検証～ 東海大学政治経済学部助教授 川 崎 一 泰1 1. はじめに 少子化が進行しているわが国において、近年、教育をめぐる改革が急速に進められてき ている。制度面では、学習内容 ・授業時間を削減するいわゆる 「ゆとり教育」、国立大学の 独立行政法人化などの改革が進められている。また、財政面でも、大学では補助金を競争 的資金に切り替え、地方財政改革の中で義務教育費の国庫負担の削減が大きな議論の焦点 となっている。一方で、学力低下や学級崩壊など教育をめぐる課題は山積している状況で ある。 こうした中、日本において、各方面から様々な意見が出されるようになってきた中でも 経済学の分野でも、荒井(2002) 、小塩(2002) 、伊藤・西村(2003) 、永谷(2003) などの出版が なされるようになってきたが、大学等の高等教育をめぐる研究は散見されるようになって きたものの、初等教育をめぐる研究は数少ないのが現状である。また、初等教育において は40 人学級で一人担任というクラス編成を戦後から長い間維持してきた。戦後まもなくの 日本の教育事情と今日の教育事情では、家庭環境や地域コミュニティなどの周辺環境は大 きく変化し、個人も多様化してきたにも関わらず、この40 人学級体制を維持してきた。伊 藤・西村(2003) では、そのイントロダクションで、初等教育における学級崩壊や学力低下の 要因の一つが、40 人学級に固執したことにあると指摘し、初等 ・中等教育に問題が発生し たときに、とるべき道は少人数学級の実現であり、ゆとり教育ではなかったと主張してい る。このように、初等教育における少人数教育に関しては、古くから提案されてきたもの の、児童数が増加していた頃には施設整備が優先され、費用対効果が見込めないこと