平城京内部构造関若干问题.pdfVIP

15 平城京の内部構造に関する若干の問題 山田安彦 Some Problems concerning the Internal Structure of Heijokyo YASUHIKO YAMADA 本研究の現代的意義 律令的都城は律令的デスポティズムの強制により，当時の社会の大部分を構成する農民の意 志を無視して計画し実施され，その経営は全く政治的情勢に決定されたた枷こ，その繁栄は短 く，道都すれば，たちまちその都市的機能を失い，また急速に田野へと変り行く.現代の都市 からみれば，平城京は都市として多くの欠陥があるが，当時，あれ程の整備と豪華を誇った平 城京でさえ，新京が造営されるのにおよびウその面影は消え去り，ただ興福寺・東大寺等の勢 力のもとに門前町として，外京のごく1部分にのみ条坊の姿を留め，後世にその繁栄を続けた・ そのように地域的機能に基づくのでなく，政治的権力によって形成された都城が政治の変動 に従って，再びもとの農村的景観に転化する現象，っまり地域において，農村→都城都城→農 村この両者の異質的な景観変遷の速度とその要因を追及することが歴史地理学の重要な課題の 1づであろう・これが筆者の従前からの大きな目的でありD，本稿もまたその目的に接近する 試論の1部である・ さて，その日的の意義について要約して論説しておく.景観の変遷には種々なる様相がある. 社会経済の発達・技術の進歩（総括して一般に文化力の増強）により，既成の文化景観に改変 が加えられる場合と新たに文化景観が形成される場合がある・前者の場合は，既成の文化景観 と新しい文化力によって形成される景観が有機的に融合するものと形態だけが同一で，機能が 変化するものとが存在する.しかしそれが融合しない場合は，既成の文化景観が消滅するか， ある・ その事例は数多いが，ここでは省略する.しかし顕著な例を示すと，社会.経済機構が変化 し，技術が進歩しているにも不拘，遠古の地割が今日にまで多少の変化はあれ，その形態を残存 したり，また交通路の位置が長く保持されたり，集落（都市・農村）の位置や形態がその遺構 を留めたりしている2）・この場合，遠い過去の景観が早く内部の機能を失いウ遺跡景観となり， 近い過去の景観の変貌が前者のそれよりおそいとはいいえない・その変遷の速度は景観地域 シ.ステム を分析して，その変遷の速度と要因を追究することが，史的変遷によって景観組織（地域体系） を理解しうることなり，地域現象に関する史的変容の地域的法則性や地域発達の法則を見出す ことになる3）.したがって，われわれは地域の歴史的系列を整理しようというのではなくして， 16 山 田 安 彦 人間集団が関与してきた地域構成要素の組合せ，地域と地域め関係とか，地域の組織（有機体） の成立発展を通じて現代の地域を理解することである4）．なお注意すべきことを説く・地域の変 遷はつまり地域史であり，これほ地理学が地域主義を尊重しておりながら，ややもすれば歴史 主義に傾倒することになる．そこで時間によって地域の構造・機能が異なり，それとともに形 態も違うこと．つまりそれは換言すれば，時代の進歩によって地域の主導因子が質・量ともに 変化するので，その主導因子を主体とした各地域構成因子と？関連＝組織を把撞するならば， 地域体系の流れが理解しえて，地域史に流れることなく5〉，前述した史的変容の地域的法則性 が見出されることになるのである．これが明白になってこそ，現代の地域の運動方向と様相が 明かになり，地域の発宰証法的止揚によって高度の成長に向うことになる・ 本研究の現代的意義が明かになった．そこで，そのような観点から律令的都城の分析を進める が，本稿の歴史地理学的研究の作業の意義も一言しておきたい．ここに律令的都城を選んだの ほ，都市の史的変遷