林さんがヴァイオリンパート向けにご用意下さった文書(word) -kn.docVIP

ショスタコーヴィチ５番の個人練習のために 2007年2月1日 林　俊夫 １．はじめに ヴァイオリンパートの皆様へ。僭越ながら、私なりの指使いと練習の手引きを作成してみました。指使いに関しては、個人差（指の形?大きさ、偶数ポジションへの慣れ度合、好み等） がありますので、私の指使いが絶対ということではありません。参考にしていただきながら皆様が最もしっくりと感じるものを自ら発見していただき、使いこなせるまで習熟していただくことが大切です。 練習方法に関しては左指の習熟方法、すなわち効率的な譜読みに目的を絞っています。 したがって、指使いとその動かし方について論じています。ボーイングの選択は、フレージングとテンポによって左右されますので、コンマス及びパートリーダーに委ねたいと思います。 なお、一般的な左手の基礎練習としては、各調での音階（２オクターブ、３オクターブ）? 分散和音?ポジション移動?重音などの練習を、ウォーミングアップを兼ねて最初に10分程度かけると良いでしょう。 一方、右手のボーイング練習は左手以上に重要です。なぜなら、弓の扱いこそが楽器の音色と音楽の表現力に決定的な影響を与えるのであり、そのため多種多様なテクニックが右手には要求されるからです。（より重要だからこそ、多くの人にとって利き手の右手が弓を扱う役目を担わされています。） しかしながら、実際に曲を練習する際に正しい音?音程が取れない状況では、右手はスムーズには動きません。したがって、曲（特に難曲）を素材にして右手の練習を行なうことは非効率なのです。右手の練習方法に関しては、全弓での音階練習?弓の各部（弓元?弓中?弓先）を使った練習曲（レガート、スラー、スタッカート、マルカート奏法等及びその組合せ）で地道に継続することが、結局は近道です。 今まで演奏が困難であった箇所がある程度弾けるようになると、様々な波及効果があらわれてきます。 自分自身の技量向上により、満足感や達成感が得られる。 練習した難所以外の、別の難所への取り組みが容易になる。 自信がついてくるので、音量が大きくなる。 音程がよくなり、楽器が響くようになる。 ある程度の余裕が出てくるので、周囲の音が聴こえてくる。 周囲の音が聞こえるので、自分のパートの役割を認識しやすくなる。 自分の役割を認識し他のパートを聴くことにより、音楽の全体像を掴みやすくなる。 音楽の喜び（ムジークフロー）を存分に味わうために、まずは今の自分の技量をワンステップ上げることに取り組んでください。毎日少しずつでも取り組めば、年令や現在の技量レベルに関係なく必ず上達することが可能です。このメモが少しでもそのお役に立てれば幸いです。 ２．記号についての注釈 ?(　)の中にＧ?Ｄ?Ａ?Ｅと記載してある箇所は、その弦を使用する。 ?１－１（２－２）と記載している箇所は、その指をずらせて半音上げる（下げる）。 ?丸で囲まれた指数字は、その指が基点となるので出来るだけ押さえたままとする。 ?音譜の上部に記載した指使いが第一候補で、下もしくは(　)に記載したものは第二候補。 音符に上(下)向き矢印がある箇所は、その音が半音低く(高く)なりやすいという注意。 ?二つの指数字にまたがった記号「∧」は、その二音が半音関係にあることを示す。 二つの指数字にまたがった記号「ダウン弓と同じ記号」は、その二音が五度関係にあることを示す。 各論文章中の数字は指数字をあらわす。 各論文章中で、音高はローマ字であらわす。半音は＃?をつけてあるが、日本での慣例に合わせて、階名シ（固定ド方式）はＨ，階名シ?（同）はＢと表記した。 ３．練習のつぼ（総論） 楽器を使っての練習 難しい箇所は、細分化して小さなユニットごとに練習する。 テンポはゆっくりから始めて、徐々に速くする。その際には出来るだけインテンポを心掛ける。但しメトロノームの使用は、効率が悪くなるので当初は使用しないほうが良い。 ポジション移動が難しい場合は、ポジション移動の部分だけを取り出して練習する。 パッセージが二弦にまたがる場合は、隣接する音が協和音であれば、重音で鳴らして 　音程を確認する。（八度、六度、四度、三度） 何回も繰り返し練習し、一つのかたまり毎に暗譜が出来ることを目標とする。 夜など音だしが出来ない場合は、弓を持たずに左手を指板上で動かす練習をする。 楽器を使わない練習 楽譜を見ながら、声を出して（出さないで）歌う。 楽譜を見ながら、左指を動かす。 楽譜を見ないで、声を出して（出さないで）歌う。 楽譜を見ないで、左指を動かす。 読譜がある程度出来るようになったら 読譜が出来てきたら、一応自分のパートをなぞって弾くことは可能になります。しかし、これは音楽を演奏する入口に足を踏み入れたに過ぎない