海洋科学研究Ⅰ报告书.PDF

海洋科学研究Ⅰ報告書 (論文レビューと私が行った再試について) 3AOG1207 濱本 拓真(3aog1207＠ scc.u-tokai.ne.jp) 目次 要旨 1. は じ め に 2. 先行研究で見る ElNino 現象 2-1 ElNino 現象の分類 2-2 ElNino 現象を説明する理論 2-3 1997-98ElNino 2-4 2002-03ElNino 3. Michael J. Mcphaden (2000) の再試 3-1 結果 3-2 まとめ 4. 今後の課題 5. 参 考 文 献 要旨 日本のみならず世界的に見ても気象の変化に左右されるものは多いと考えられる。農業 や観光産業などがその例であり、気象の変化は様々な面で私たちに大きな影響を与えるだ ろう。また、それほど大きく影響するわけでなくても私たちはテレビでその日の天気や、 週末の天気を確認してしまう。このように、人は近頃、気象への関心を高めているのでは ないかと思う。 私が研究の対象として選んだ熱帯域は最も大気の対流活動が盛んな場所として知られて いるが、太平洋の熱帯域では ElNino 現象が 3～7 年の周期で発生する。そして ElNino 現象 が発生すると、世界各地で気象が大きく変化することにより深酷な社会経済的影響が出る ことが知られている。また、テレコネクションを介して遠く離れた日本の気象にまで影響 するという説もある。また、ElNino 現象が発生すると、アメリカ東海岸の方では上陸する ハリケーンの数が減少し、ハリケーンによる死者もしくは経済的損失が減少する傾向にあ るという興味深い一面も持っている。これらのことから、ElNino は世界で注目される大規 模な気象現象であると言えるだろう。 このElNino 現象の研究は 1970 年代頃から始まり、様々な視点と手法により研究されてき た。しかし ElNino は大規模な大気・海洋の変動が結合した現象であることに加え、多くの 気候・気象学的もしくは海洋学的な現象が関連している故、その発生-発達-終息のメカニズ ムにおいて明らかになっていないことが多分に存在する。既存の観測ブイによるデータの 取得に加え、1990 年代からは衛星観測の導入などにより研究に利用できるデータは空間解 像度においても非常に良くなったが、それでもデータの精度の問題や利用できる期間の制 限などがあり、まだまだ課題は山積みであると考えられる。よってこれらの不明な点を露 わにし、ElNino のメカニズムを明らかにしていくことは世界的に見ても非常に重要なこと である。私はこの ElNino を研究することで少しでもElNino の解明が進めば、世界そして日 本に貢献できるのではないかと思っている。 海洋科学研究Ⅰでは ElNino 現象の研究で必要な知識を身につけるため、論文講読と論文 で行われていた解析の簡単な再試を行った。今回の報告書ではこれらのことを中心に記述 することにする。 1. はじめに ここでは、ElNino 現象の概要を説明することにする。 ⅰ) エルニーニョ現象 エルニーニョはもともと海の現象を指す言葉で、スペイン語で「神の子」という意味で あり、ペルーやエクアドルで使われている。赤道付近では海面水温の季節変化に年 2 回最 高・最低のピークが現れる半年周期の変動が卓越することが多いが、上記の海域では湧昇 の効果により南半球の冬に海面水温が低くなり、逆に夏には湧昇が弱くなることで水温が 高くなるので、1 年を周期とする季節変化が現れる。水温の上昇は 12 月頃に見られ、この 季節的に水温が高くなる現象を現地の人がエルニーニョと呼んでいた。しかし、水温が低 くなるはずの季節になっても水温が低くならず、広い海域で異常な海面水温の上昇が見ら れることが調査からわかり、この大規模な現象を季節的な現象と区別するために「ElNino 現象」と言われるようになった。 日本におけるエルニーニョ現象の定義はエルニーニョ監視区域(5°Ｎ-5°Ｓ、150°-90° Ｗ(図 1-1))における月平均海面