印象记-东京工业大学.PDFVIP

◆平成30 年度 第4 回（通算第71 回）蔵前ゼミ 印象記◆ 日時：2018 年7 月20 日（金） 場所：すずかけ台J221 講義室 大岡山S223 講義室（遠隔講義室） キャリアの階段を登り続けるマルチステージな生き方 –— 世界初のインクジェット写真画質プリンター開発から今日まで—– 山口修一 （1981 機械，83 MS）㈱マイクロジェット社長，元セイコーエプソン㈱ 恋愛の世界では「押してダメなら引いてみろ」が 山口さんのプロフィール 定石となっている。研究開発の世界でも思うよう 学生時代はどん底生活 ║ 山口さんが高校生の時 に進まないときは発想や視点を変えてみるといい に，父親が病に倒れ長期療養が必要になった。進 ようだ。特に理系人は論理的に深く掘り下げ問題 学を一時あきらめかけたが，仕送りゼロでも何と を解決するのが得意だが，理詰めでは解決できな かしようと思いなおし，本学の4 類に入学した。 い場合もある。そんなとき私たちは往々にして， 生活費を稼ぎながらの学業は大変で，「今が人生の 窮地から抜け出すために「諦める理由」を考えた ボトム」と自分に言い聞かせながら，機械工学科 り，友人に相談して「そこまでやっただけでも偉 で研鑽を積み，修士までの6 年間を乗り切った。 いよ」と慰めてもらったりする。これは私たちに 山口さんの話を聞きながら，私自身の学生時代に 備わった生体防御反応のひとつで，過度のストレ も思いを馳せた。私の場合，仕送りがあったので スから身を守るための正当な行動ゆえ否定される アルバイトに追われることはなかった。参考まで べきものではない。しかし，その前に 「視点を変え に，私の支出は授業料・下宿代（3 畳一間）・定期代・ て問題の本質を考え直してみよう」というのが山 銭湯代 （週2 回；夏場は毎日濡れタオルで体拭き）・食費 （朝は 口さんの地獄を見るような経験に基づくアドバイ ブドウパン，昼と夜は学生食堂の定食）の他はほとんど無し スだった。標語としては「押してダメなら引いて で，今から思えば修行僧のような生活をしていた みろ」が分かりやすくていいと思うが，専門的に わけだが，それでも故郷で中学の同級生たちが毎 は，視点を広げて人が思いつかない意外な活路を 日汗水流して働いていることを思えば，私は朝か 見いだす思考方法をラテラルシンキング（Lateral ら晩まで好きなことができて恵まれていると思え thinking）ということも覚えておきたいところだ。 た。仕送り無しの山口さんの場合は，アルバイト に追われ，睡眠時間を削る毎日だったのではない 山口さんの人生そのものともいえるインクジェッ だろうか。 トとの出会いの伏線は，卒業研究の研究室配属の 日にちを間違えたことに始まり，就活では超優良 運命を前向きに受容 ║ そんな中，大事な日にちを いち