外科治疗手术とは.pdf

外科治療 （手術とは） 執筆者　吉野一郎、多田弘人 肺がんの手術とはどういうものですか 033 どのように手術をするのですか 　肺は，左右の胸腔（箱のような空間の）に一つずつ入っており， 右は上・中・下の3肺葉，左は上・下の2肺葉にわかれています（図 1）。通常，これら5つの肺葉のうちで，肺がんに侵されている部分の肺葉を切 除しますが（図2），肺がんの拡がりや患者さんの状態によってはさらに大き く切除したり（拡大手術など），あるいは小さく切除（縮小手術）したりします。 手術は全身麻酔で行われます。胸腔に入る方法は様々ですが，多くはわきの 下や背中から入ります。従来は皮膚を15cm以上大きく切開し肋骨の間を器 械（開胸器）で開いて行うものが主流でしたが（標準開胸），最近は，切開は 10cm以下にとどめ，胸腔鏡という直径0.5～1cmで長さ30cmくらいの棒 図1　肺と胸腔 66 第5章　外科治療（手術とは） 図2　肺がんの切除の方法 図3　肺がんの手術　 第5章　外科治療（手術とは） 67 を肋骨の間から挿入してこれに照明とビデオ装置をつけて，テレビモニターで 観察しながら行う胸腔鏡下手術（video-assisted thoracic surgery; VATS） が肺がん手術の主流となっています。テレビモニターと切り開いたところから の観察を併用する場合（胸腔鏡補助下手術）と，テレビモニターの観察だけで 手術する場合（完全鏡視下手術）がありますが，それぞれ利点と欠点があります。 細かい手技や適応などはそれぞれの外科医や病院によって多少異なります。手 術は呼吸器外科専門医のいる施設で受ける事が望ましいでしょう。出血量はお およそ数mlから200mLくらいまでで，通常の手術では輸血が必要になること はあまりありません。手術時間は2～4時間です。肺を取った後の部分には血 液や空気がたまるので，ドレーンと呼ばれる管を入れて吸引します。この管は， 手術後2～4日くらい入れておきます。 しかし，肺がん自体が大きい場合や周囲に食い込んでいる場合には，標準開 胸により大きく切開する必要がある場合もあります。 手術の後は，数日以内に酸素吸入もいらなくなり，元気な患者さんは