小型6 分力計を用いた歩行動作の運動力学的分析に関する試作研究.pdfVIP

川崎医療福祉学会誌　Vol. 21　 No. 1　2011　103 − 106 原　著 小型６分力計を用いた歩行動作の運動力学的分析に関する 試作研究 *1 *1 *1 *1 *1 *2 吉村洋輔 　渡邉　進 　小原謙一 　大坂　裕 　伊勢眞樹 　森本正治 要　　　約 　歩行障害を有する障害者の歩行動作を評価する方法として，床反力計や三次元動作解析の機器，あ るいは3Dカメラなどの機器による動作分析がよく行われている．しかし，床反力計や空間座標計測 装置は広い空間が必要であり，専用の計測場所を確保する必要がある．また，計測ソフトウェアも非 常に高価であり，ごく限られた機関でしか使われていないというのが実情である． 　これまでそのような装置を用いたごく限られた空間での歩行分析からしか得られなった歩行時の力 学的データを，小型６分力計を用いて簡便に計測することができる方法の開発に取組んだ．模擬義足 の支柱部に小型６分力計を組み込み，小型６分力計から歩行時の床反力値を演算算出した．それらを 従来の床反力計からの結果と比較し，同等な計測値を得ることに成功した． 　従来から床反力計の上でしかできなかった歩行分析を，計測スペースにとらわれずに計測できる方 法の確立に向けて基礎的知見になり得たと思われる． 1 . はじめに 相互位置関係）の調整を適切に行うことは，切断者 　片麻痺，対麻痺，下肢切断などにより歩行障害を に負担のかからない安定した歩行を可能にするため 9） 有する障害者の歩行動作を支援する道具として，義 に非常に重要である ．しかし，切断者の年齢，運 肢装具の開発が様々な分野で行われている1-6）．ま 動能力，切断部位などにより使用する義足は異な た，その歩行動作を評価する方法として，床反力 り，多くの部品で義足は構成されているため，義足 計，三次元動作解析の機器や3Dカメラなどの機器 側下肢への荷重量を正確に評価するためには計測環 7,8） 境の整備が必要である． による動作分析も行われている ． 　しかし，床反力計や空間座標計測装置は広い空間 　今回，これまで床反力計や空間座標計測装置を用 が必要であり，専用の計測場所を確保する必要があ いたごく限られた空間での歩行分析からしか得られ る．また，計測ソフトウェアも非常に高価であり， なった歩行時の力学的データを小型６分力計（共和 計測の設定や解析の仕方なども他の計測機器に比べ 電業製，LMF-A-1KN）を用いて簡便に計測するこ 複雑であるため使用するのにはそれ相応の知識と経 とができる方法の開発に取組み，若干の知見を得た 験が必要であり，ごく限られた機関でしか使われて ので報告する． いないというのが実情である．またそれらも設置し た場所でしか計測は行えず，しかも１試行で数歩し 2 . 対象 か計測できないという欠点がある． 　本研究の対象は健常成人男性14名とした．対象者 　下肢切断者の歩行動作の力学的な動作分析に着目 の平均年齢は20.7±0.5歳であった．本研究の対象者 すると，下肢切断者が健常者により近い歩行動作が には事前に研究の趣旨を十分に説明し同意を得た． できるかどうかはかなりの部分が義足に依存してい る．切断者の装着する義足のアライメント（部品の