血液疾患における原由不明の発熱について.pdfVIP

VOL.40 NO.3 血液疾患における発熱 331 血液疾患における原因不明の発熱について 浦 部 晶 夫 関東逓個病院血液内科* (平成3年9月26日受付 ・平成3年12月10日受理) 血液疾患の入院患者 において38℃以上の発熱が見 られ る頻度 とその原因 について調査 した。 1988年4月か らの1年 間に79人の患者 が延べ130回入院 し,全入院期 間の9.8%に38℃以上 の発熱 が見 られた。発熱 のエ ピソー ドは103例あ り,その94,2%が感染症 が疑 われた もので あった。約 半数 の症例 では発熱時の好 中球数 は500/μ1以下であった。菌 の検 出率 は41.2%で あった。菌 の種類 は,グ ラム陽性菌が61.1%,グラム陰性菌が25。9%,真菌が13.0%であっ た。16人の患者 が期 間内に死亡 し,死因の81.3%は感染症 によるものであった。 Keywords:血液疾患,白 血病,発 熱,感 染症 血液疾患,特 に造血器系の悪性腫瘍性疾患においては, 回見 られてい る。経過 中,1回 も発熱 しなかった患者 経過中に発熱 のエ ピソー ドを伴 う場合がきわめて多い。血 は35人(44.3%)であ り,55.7%の患者 は経過 中に 液疾患 に伴 う顆粒球減少症や免疫不全があることに加 え 平均 して2回 以上発熱 していた ことにな る。 て,抗腫瘍剤の投与によって もたらされ る顆粒球減少症 の (3)起 炎菌 の検 出率 発現頻度が高いことな ど,発熱をひ き起 こす要因が多いた 延べ103例の発熱 のエ ピソー ドの うち,イ ンター フ めと考えられる。血液疾患の経過中に出現する発熱の多 く ェロン投与 に よるものが2例,自 然 に解熱 した ものが は,顆粒球減少症 に伴 う感染症であると考 えられるが,感 2例,明 らかな腫瘍熱 が2例 で,残 りの97例(94。2 染部位や起炎菌が必ず しも明 らかにな らない場合が多い。 %)が 感染症 が疑 われた ものであった。97例の感染 ここでは,血液疾患の経過 中に出現する発熱の頻度や原因 症 が疑 われた発熱 の うちで,細 菌学的検索 に よって菌 について検討 を加えた。 が検 出 された ものが40例(41。2%)で,菌が検 出 さ 1.対 象 と 方 法 れ なかった ものが57例(58.8%)であった。 血液疾患 を対象 とす る病棟 において,入 院患者 に発 97例の感染症 が疑 われた発熱 の うち,81例(83。5 熱がみ られ る頻度 を知 る 目的で,関 東逓信病院血液 内 %)は 抗生物質 の投与 に よって解熱 してい る。菌 の検 科 において1988年4月1日 か ら1989年3月31日ま 出 され た40例の うち28例(70.0%)は抗生物 質 の での1年 間に入院 した患者 に38℃以上 の発熱 が見 ら 投与 に よって解熱 し,菌 の検 出 され なかった57例で れた頻度 について調査 した。 また,発 熱患者 にお ける も53例(93.0%)が抗生物質 の投与 に よって解熱 し 好中球数,臨 床経過,細 菌学的検査 の検索結果等 につ た。 いて も調査 した。 (4)発 熱時の好 中球数 II.結 果 延べ103例の発熱 の うち,イ ンター フェロンによる (1)対 象患者数 と基礎疾患 発熱 を除 く101例の発熱 時の好 中球数 を調べた結果 を 79人