癌患者血清並びに尿ムコ蛋白の免疫学的研究.pdfVIP

金沢大学十全医学会雑誌　第74巻　第3号　467－477　（1966） 467 癌患者血清並びに尿ムコ蛋白の免疫学的研究 1二抗原分析ことに．その癌性変異 金沢大学医学部第二病理学教室（主任　石川大刀雄教授） 　　　　　寺　田　冨士　雄 　　　　　　　（昭和41年7月14日受付）　　　　1 　尿ムコ蛋白に関し，K頭g＆Boyce　1）は，正常人 実験材料並びに方法 尿中に排泄されるムコ蛋白の化学的組成を調べ，血清 1　ムコ蛋白の抽出 ムコ蛋白に比し糖の含有量が非常に高いことを述べ， 1．抽出材料 さらに電気泳動法によって，尿ムコ蛋白と血清ムコ蛋 　1）癌患者尿；手術により確かめられた癌患者約 白を比較検：討し，両者に共通な成分のほかに，尿ある 100例より，主として24時間蓄尿により採取した， いは血清のみに存在する成分もあると記載し，さらに 　2）健康人尿；健康既約30例より随時採取した， 病態時における尿ムコ蛋白の量的変動は，血中ムコ蛋 　3）癌患者血清（以下Scと略す）；手術により確 白の変動と平行するとしている． 認した主として胃癌患者約80例 　尿ムコ蛋白は単一ではなく，多くの分画に分れるも 　4）健康人血清（以下Snと略す）；約30例 のであって2）～5），例えば，Discheら5）は少なくと 2，抽出方法 も8つの分画に分け，これらの各分画は，’その起源に 　上記の採取した尿及び血清はいずれも40Cに保存 従ってそれぞれ糖及び蛋白の組成が異なっており，こ し，それぞれ下記の方法によってムコ蛋白を抽出し れらのムコ蛋白の分離・解析は，疾患の診断的価値を た． もつものと考えている． 　1）Tamm法；癌尿及び健康人尿から，　Tammら 　癌，炎症などの各種病態時に，尿ムコ蛋白が増量す の方法22）に従って，・0．58M食塩水に不溶の蛋白をと ることは既に知られている1）6）7）．癌などの際に尿中に り出し，白色粉末を得た．（癌尿より得たものをTc， 出現または増量する蛋白体として知られている箱守ら 健康入尿より得たものをTnと略すことにする） のKappa－mucopolypeptide　8）～12），佐藤らの癌腫毒 　2）AnderSon法；癌尿及び健康入尿から，　An・ i3）14），中川らの癌尿エキス15），　Watermannの尿蛋白 dersonらの第2法23）に従って，安息香酸ソーダに吸 組成16），本田によって抽出されたDonaggio反応陽 着し，弱アルカリで溶離する蛋白をとり出し，淡褐色 性物質17）～21）などもムコ蛋白にほか