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こうくう 要介護者の口腔ケア 口腔ケアシステム 口腔ケア支援機器 国立長寿医療センター病院 先端医療部口腔機能再建科 口腔ケア外来 はじめに 要介護者に対する口腔ケアの必要性 高齢社会を迎え、ＱＯＬ（生活の質）の向上のために、高齢になっ てもよく噛めておいしい食事をとる事ができる清潔な口腔を維持する 事は大変重要です。 最近、高齢者に対する口腔ケアの関心が高くなっていますが、要介 護高齢者の場合、自分で歯を磨く事は容易でなく、さらにご家族や介 護者にとっても他人の口の中を清掃する事は難しい事が多いため、結 果として不潔なまま放置されがちです。 近年、誤嚥性肺炎＊ ＊＊ や心内膜炎 が口の中の汚れ・微生物と関連し ている事や、噛み合わせが老化・痴呆に及ぼす影響が分かって来まし た。とりわけ、高齢者の直接死亡原因の第１位である誤嚥性肺炎は、 口腔ケアの徹底によってかなり防げる事が科学的に証明されてきまし た。適切な口腔ケアを実施する事で要介護高齢者がこれらの病気にか かりにくくなり、口と全身の健康を維持できたら、というのが私ども 歯科医療従事者の願いであります。 国立長寿医療センターでは平成11年より全国にさきがけ口腔ケア外 来を開設し、多くの方に口腔ケアの方法を伝えご好評を頂いておりま す。口腔ケア外来では、健常な高齢者への歯磨き指導をはじめ、ご自 身で歯磨きが難しくなった要介護高齢者および介護者に対し、①短時 間で、②確実に、③安全に、④安価で、⑤効果的に、⑥安楽に、⑦口 全体がきれいになる「口腔ケアシステム」を伝えてきました。さらに、 より重度な要介護高齢者に対し「口腔ケア支援機器」を開発、臨床応 用を進めてきました。これらにより要介護高齢者の口腔環境は飛躍的 に向上し、同時に介護者の負担も大幅に軽減しました。 このような取り組みで、要介護高齢者と介護者双方のＱＯＬ向上を 目指しています。 ＊誤嚥性肺炎：口の微生物が肺に入りこんで起こる病気 ＊＊心内膜炎：心臓に微生物が繁殖する病気 まず、要介護高齢者の口の中を見てみましょう 食べかすがたまっています 要介護高齢者の口の中はどの ようになっているのでしょうか。 たまった食べかす 痴呆や脳卒中の実際例を見てみ ましょう。 歯肉が腫れています 麻痺がある場合、十分清掃されにくく、 麻痺した側に食べかすがたまっている 事があります。 歯垢がついています 汚れた入れ歯 腫れた歯肉 長い間はめたままの入れ歯がある場合、 不潔になった入れ歯が周りの歯や粘膜を いためています。 赤く染まっている部分が歯垢 舌が汚れています 染色液で歯垢（微生物の塊）を染め出し てみました。歯が全体的に汚れているの