低温下における制振合金M2052の減衰能評価 - icrr.u-t.pptVIP

2003-Feb-7 (Wed) 第3回TAMAシンポジウム MnCuNiFe合金の低温における内部摩擦の研究 東大新領域　物質系専攻 三尾研究室　丹治亮 背景 低温精密測定システム ( 100 K) 低温STM 大型低温重力波望遠鏡（LCGT） 要請1: 熱的接触と機械的絶縁の両立 要請2: 清浄真空の維持 →金属製制振材に期待 MnCuNiFe (M2052) Mn-20Cu-5Ni-2Fe (at.%) 制振合金として市販 室温付近の内部摩擦は調べられていて… 周波数によるピーク温度のシフト ひずみ振幅依存性 目的 170 K以下の内部摩擦はまだ調べられていない．そこで… 1. 低温の制振性の確認 2. 材料設計の基礎的知見の獲得 MnCu (? 70 at.% Mn)の物性: 内部摩擦 MnCu （Mn濃度全域）の物性: 磁性 カノニカルスピングラス (SG) ミクト磁性 (M) 反強磁性?スピングラス 混合相 (AF + SG) 原因: Mn間距離によってJの正負が変化 Mnの配置がランダム →強磁性/反強磁性相互作用の混在　　　　 内部摩擦，弾性率測定 @ KEK 測定法: resonant-bar method M2052板ばね（ x 5.0 mm x 0.50 mm, : 板ばね長） 定常共振→減衰振動 パラメータ 内部摩擦: 対数減衰率δ 弾性率: (共振周波数 f0)2 条件 = 51.6, 37.5 mm ひずみ振幅: 1.0 x 10-4 温度: 4.2 ～ 300 K 測定装置全体 コイル-マグネットで励振 シャドウセンサで変位ピックアップ フィルタリング＆増幅 DAQで取り込み 共振周波数，対数減衰率 測定結果 160 K境に摩擦ピーク2つ →低温で新たなメカニズム 板ばね長（共振周波数）変化によるピークのシフト →熱活性化と緩和 ヤング率のピーク 帯磁率測定 @ ISSP 温度履歴 →磁気クラスターの存在 解析: 帯磁率と摩擦 式 をフィッティング 直線からの逸脱と低温摩擦ピークの立ち上がりがほぼ同時 →クラスターの磁気モーメントの凍結と摩擦が関連 解析: 摩擦と緩和過程1 低温ピークに式 をフィッティング 解析: 摩擦と緩和過程1 1/Tm に対し ln(f) をプロット（アレーニウスプロット） 解析: 摩擦と緩和過程2 式 が3つ重なり合っていると仮定して フィッティング（　= 37.5 mm限定） →最大のピークの活性化エネルギーE (3 ± 1) x 10-2 eV →前の結果と矛盾せず 活性化エネルギーの比較 メカニズム 解析結果のまとめ クラスター磁気モーメントの凍結と低温摩擦ピークの立ち上がりが同時 低温摩擦ピークは緩和型で，その活性化エネルギーはMnCuスピングラスの磁気緩和に近い メカニズム 強磁性磁気クラスターの磁歪による応答ひずみの遅れ その緩和時間は，磁気モーメントが異方性エネルギーの山を熱活性で乗り越える過程が決定している まとめ M2052の内部摩擦と帯磁率を調べた 低温の摩擦はそのままの実用には不足 磁性と摩擦の関連を確認 Mn濃度を減らして活性化エネルギーを下げると低温に有利 今後に向けて さらに詳しく調べる必要がある 物理的興味: スピングラス，ミクト磁性と摩擦の関連を調べた例は稀 応用価値: メカニズムが低温で有利に働く可能性あり 厳密な議論の展開に向けて 磁気異方性を調べる 活性化エネルギーの一致をはっきりさせる 摩擦の磁場による効果を調べる 性能向上に向けて 組成，構造を単純化し，組成と制振性の関係を調べる * * Yin et al. J. Japan. Inst. Metals, 65 (2001) 607. マルテンサイト変態 (f.c.c. →　f.c.t.) 反強磁性転移 双晶の形成 磁壁，磁歪効果 連携 双晶の運動による 応力/ひずみの緩和 応力による 不可逆的 磁壁移動 内部摩擦 低温でどうなるか? 磁気クラスター の形成 M2052にも現れるか？ 摩擦に寄与するか？ P. Gibbs et al. J. Phys. F: Met. Phys, 11 (1981) 27. 包絡線 傾き MPMS (Quantum Design) で零磁場/磁場中（100 Oe）冷却直流帯磁率を測定（測定磁場100 Oe） : ピーク温度 54.3 89.0 共振周波数 f(Hz) 79.7 ± 0.9 37.5 72 ± 1 51.6 ピーク温度 Tm (K) 板ばね長 (mm) →活性化エネルギー (3.2 ± 0.5) x 10-2 eV グラフの傾き →MnCuの磁気