海洋構造物用高強度高じん性溶接材料の開発状況.pdfVIP

まえがき＝近年のエネルギー需要の高まりに伴って世界 の石油?天然ガス開発は活発化しており，東南アジア， 韓国，中国などでの海洋構造物建造量が大幅に増加して いる。また，資源探索の範囲が深海や低温の海洋に広が るにつれて，海洋構造物に用いられる鋼材の高強度化， 高じん性化が進んでいる。高強度化に向けた対応では， 従来0.2％耐力（以下，YSという）460MPa以下が主体で あったものがYS500MPaからYS690MPa級といった鋼材 の使用が増加してきている。じん性面では，－40℃から －60℃でのシャルピー衝撃吸収エネルギー値に加え，溶 接継手には近年，ぜい性破壊発生防止特性が要求される ようになってきている。このため，破壊じん性値として 後述の限界CTOD値が要求スペックに付与されることも 増えている。 　本稿では，近年の海洋構造物の高深度化の動向やそれ に対応した高品質溶接材料の開発状況について述べる。 1．海洋構造物の種類 　石油?天然ガス用海洋構造物は，海底に直接支持され る固定式?着底式と間接的に支持される浮体式に大別さ れる。固定式?着底式設備としては，海底に固定した脚 部に掘削設備などの上部構造を搭載したジャケット （Jacket），固定式脚部と昇降可能な上部構造からなる甲 板昇降型海洋掘削装置（Jack-up Rig），可撓（とう）性の 脚部を持つコンプライアント?タワ （ーCompliant Tower； CT）などがある。浮体式設備としては半潜水型移動式 海洋石油掘削装置（Semi-Submergible Rig；SSR），緊張 係留式プラットフォーム（Tension Leg Platform；TLP）， 浮体式石油生産?貯蔵?積出し施設 （Floating Production, Storage and Offloading facility；FPSO），係留式であり円 筒形の浮体式下部構造を備え貯油能力を持つスパー （Spar）などが挙げられる。浮体式の設備は固定式より も大水深の海域で掘削?生産を行うことができるため， 近年の海洋資源探索域の高深度化に伴って建造数が増加 傾向にある。表 1に主な海洋構造物の種類と稼動水深， 鋼材の強度クラスを示す1），2）。構造物の大形化に伴い， 軽量化を目的としたYS460～690MPa級の高強度鋼の適 用例が増えている。 2．海洋構造物の設計概念 　1980年に起きたAlexander Kielland号の転覆事故 3）を 契機とし，1980年代には構造物の安全性を高めるため設 計思想に弾塑性破壊力学が導入された。これにより，鋼 板に対してはぜい性き裂の伝播停止特性（アレスト特性） が，また溶接継手にはぜい性破壊の発生防止特性が要求 16 KOBE STEEL ENGINEERING REPORTS/Vol. 63 No. 1（Apr. 2013） ＊1溶接事業部門　技術センター　溶接開発部 海洋構造物用高強度?高じん性溶接材料の開発状況 Recent Development of High-strength and Tough Welding Consumables for Offshore Structures As the exploration fields of oil and gas resources expand into deeper and colder seas, higher strength and greater toughness are required for the structural materials, including welding materials, used in offshore structures. Recent offshore structures require structural materials having sufficient CTOD properties, including yield strength of 460MPa or higher and good impact toughness down to －60℃. To meet such requirements, we have developed advanced welding consumables for shielded metal arc welding (SMAW), submerged arc welding (SAW) and flux cored arc welding (FCAW). For SMAW and SAW consumables, the basicity of the