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研究者・技術者のための化学実験にかかわる規則・法律入門 Ⅰ 実験室での試薬の取り扱いに関する法令と実務 ―排出規制関連― 川 上 貴 教 2012 年入門講座として「研究者・技術者のための化学 実験にかかわる規則・法律入門」を企画いたしました。近 年，法律遵守や安全にかかわる事項が，より重要視される ようになってきています。当然ながら，我々研究者，技術 者も社会の一員として，単に実験，研究の実務に励むだけ ではなく，安全面に配慮しつつ，諸規則を守り，研究・教 育活動を行う必要があります。また，知的財産の慎重な取 り扱いが求められています。しかし，日常的な業務の中で は，実際に問題に直面するまで，法例や規制に無頓着であ ることも多いのではないでしょうか？ そこで，本入門講座において，化学に携わる研究者・技 術者がかかわる法律，規則について，学ぶ機会を設けまし 図 廃棄物の区分 た。本号より，試薬管理，知的財産の取り扱い，輸出入管 1 理規制，放射線管理，実験設備にかかわる事項等について 順次解説して参ります。 〔「ぶんせき」編集委員会〕 本入門講座では2 回にわたって，試薬を扱う上で 知っておきたい法令の概要と具体的な実験室での考え方 について紹介する。法令の解説というにはかなり踏み込 1 試薬と法規制 んだ内容も含むが，最終的には各人が自主管理を考える 一般に化学薬品は有害性や危害性を有するため，取り 材料のつもりで提供する。今回は第1 回として主に環 扱いに際しては人や環境に害を与えないための様々な配 境等への排出に関係する法規制について取り扱う。 慮が求められる。特に試験研究用の試薬に関しては，個 2 廃棄物の処理及び清掃に関する法律1) 々の裁量のもとに少量多品種が多種多様な用途で扱われ ているため，本質的なリスク低減には現場で実際に試薬 ･ 概要 2 1 を扱う者による自主管理の推進が必要である。 廃棄物の処理及び清掃に関する法律（以下，廃掃法） 様々な視点から定められている法規制は，ある一定の は，廃棄物の排出抑制と適正処分，生活環境の保全と公 指針に成り得るため，法令遵守を自己目的化する風潮も 衆衛生の向上を目的とする環境省所轄の法律である。試 あるが，法で義務付けられているか否かという観点のみ 薬の話でなぜ廃棄物かと思うだろうか。試薬を使うと廃 では本質的なリスク低減として充分とは言い切れない。 液・廃棄物（以下，廃液等）が発生する。これらは廃掃 法はあくまで最大公約数的なものであり，実験室現場と 法上の産業廃棄物（以下，産廃）であり，その多くは産 いう特殊な環境下で具体的に何をすれば良いかを定める 廃でも特に有害性や危険性を有する特別管理産業廃棄物 ものではない。例えば多くの実験室にて定着している （以下，特管産廃）に該当する（図）。このあと述べる 1 「毒劇物の受払記録」ですら，厳密にいうと法の定めも 処理責任とも関連して，最