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ひめぎん情報 ■ 2013.秋号 法律の基礎の基礎⑤ ～法律の解釈方法について～ 愛媛銀行　営業統括部 弁護士　岡本　真也 　法律とは方程式を表したものなので、法律 持つ解釈でなければなりません。法律の解釈 に事実を当てはめれば簡単に結論が出るよ は、安定性と具体的妥当性を調和させる作業 うに思われるかもしれません。しかし、法律 なのです。 は数学と違い、言葉で表された方程式であ 　以下、法令解釈にどのような方法があるか り、その言葉自体が複数の意味を持ちうるた を述べます。それぞれの方法に優劣があるわ め、法律の文言を見ただけでは事実の当ては けではなく、安定性と具体的妥当性の双方を めができない場合があります。たとえば、刑 実現できるような解釈方法を選びます。 法199条では、「人を殺す」ことが犯罪となっ 　 ていますが、いつから「人」なのでしょうか ①文理解釈 （まだ生まれてなければ「人」ではありません。 　法令の用語の通常の意味に従い、文書の文 それではいつ生まれたことになるのでしょう 法によって解釈することです。法令は言葉で か）。殺すつもりもなく死に至らしめた場合（交 すから、この解釈が基本であり、これによる 通事故など）でも「殺した」ことになるので と妥当な解釈を導くことができない場合、あ しょうか。また、刑法235条では、「他人の財 るいは用語の意味が明確にならない場合に② 物」を盗むと窃盗罪になりますが、自分が他 以下の解釈方法が使われます。 人に貸していた物をなかなか返してくれない ②論理解釈 ため自力で取り返した場合、それは「他人の 　法令を一つの論理的体系に構成し、各法規 財物」を盗んだことになるのでしょうか。つ をそれぞれしかるべき地位において、これと まり、法律の文言の意味を解釈する作業が必 調和するような内容を与える解釈をすること 要となります。 です。法令には章や節ごとにタイトルが付い 　法律の解釈には、一方で安定性が求められ ていますが、「○○」というタイトルが付いて ます。解釈が安定しなければ、法律を信頼す いることを根拠にそれにできるだけ適合する ることができなくなるからです。他方で、法 解釈をすることなどです。ただし、形式にこ 律は妥当な解決を導くための道具でもあるは だわり過ぎる短所があります。 ずであり、それぞれの場合に適用されて妥当 ③立法者意思解釈 な結果をもたらすような、具体的な妥当性を 　立法の資料などによって、法規の立法当時 3 ひめぎん情報 ■ 2013.秋号 の目的・意味を明らかにして解釈することで ることから、相続分算定時に、生命保険金を す。国会における答弁などで解釈が示されて 遺贈に近いものとして特別受益の持戻しの対 いる場合があり、有力な解釈方法です。ただ 象として計算すると解釈することです（付言 し、法令が古い場合は時代遅れの解釈に行き すると、判例上、この解釈が通用するのはよ 着く場合があります。 ほどの不公平がある場合のみです）。 ④目的論的解釈 　類推解釈は、刑事法では犯人の不利になる 　③を前提に、もし立法者がその立法目的に 方向の解釈のみ禁止されています。国家権力 従って現在立法したとすればどのように立法