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研究課題： 早期消化管がんに対する内視鏡的治療の安全性と有効性の評価に 関する研究 課題番号： H17-がん臨床-012 主任研究者：京都大学大学院医学研究科 消化器内科学講座 准教授 武藤 学 １．本年度の研究成果 これまで外科手術が標準治療であった粘膜下層に浸潤する食道がんに対し、 内視鏡的粘膜切除術(EMR:Endoscopic mucosal resection)を施行した後に化学 放射線療法を追加する新しい治療戦略の安全性と有効性を評価する「粘膜下層 浸潤 clinical stage I(T1N0M0)食道癌に対する EMR/化学放射線療法併用療法の 有効性に関する第 II 相試験：JCOG0508」を開始した。現在、Japan Clinical Oncology Group(JCOG)参加施設内で試験が実施され、目標症例数137例のうち 現在15例が登録されている。 ２．昨年までの研究成果 我が国では、内視鏡治療に関する質の高い多施設共同試験はこれまでなされ ていなかったため、3カ年計画のなかの初年度（平成16年度）を使って、JCOG 参加施設内で、食道がんの内視鏡診断と治療に関する品質管理の基盤を作った。 また、放射線晩期毒性の軽減と適切な照射線量および照射野の精度向上のため に CT シミュレーターを用いた３次元照射を行う新しい放射線照射法を導入し たため、放射線治療に関する品質管理の基盤を作った。こうした基盤整備の後 に、平成17年度はJCOG参加施設の内視鏡治療医・化学療法施行医・放射線治 療医の意見をまとめて研究実施計画書を作成し、上記第II相試験を開始した。 ３．研究成果の意義及び今後の発展性 臨床的に粘膜下層にわずかに浸潤すると診断されてもその診断精度は50-60% と低く、実際は粘膜内にとどまる浅い癌である場合も比較的多く含まれる。ま た、粘膜下層に浸潤する程度の癌であれば、EMR での切除は技術的には可能で ある。もし、EMR で完全に切除されれば、追加の放射線照射は原発巣には不要 で、予測されるリンパ節にのみ照射すれはよいので、放射線総線量が軽減でき る。本試験において、内視鏡治療を応用し、臓器および機能温存ができ、かつ 予後が外科的切除に匹敵する成績が得られるのであれば、手術に変わる新たな 低侵襲治療法としての選択肢になると期待できる。現在、このような課題に対 し科学的アプローチで取り組んでいる臨床試験は本試験のみである。 ４．倫理面への配慮 本研究での臨床試験では、ヘルシンキ宣言および我が国の「臨床研究に関す る倫理指針」に従い以下を遵守する。１）プロトコルのIRB（倫理審査委員会） 承認が得られた施設からしか患者登録を行わない。２）全ての患者について登 録前に充分な説明と理解に基づく自発的同意を本人より文書で得る。３）デー タの取り扱い上、患者氏名等直接個人が識別できる情報を用いず、かつデータ ベースのセキュリティを確保しプライバシー保護を厳守する。４）JCOGを構成 する他の研究班の主任研究者等と協力して、臨床試験審査委員会、効果・安全 性評価委員会、監査委員会を組織し研究開始前・実施中の第三者的監視を行う。 ５．発表論文 1. Katada C, Muto M, et al. Clinical outcome after EMR for esophageal squamous cell carcinoma invading the muscularis mucosa — a multicenter retrospective cohort study. Endoscopy 39:779-783, 2007 2. Ashida A, Muto M, et al. Expression profiling of esophageal squamous cell carcinoma patients treated with definitive chemoradiotherapy: Clinical implications. Int J Oncol 28: 1345-52, 2006 3. Muto M, et al. NBI:A new diagnostic approach to visualize angiogenesis in the superficial neoplasia. Clin G