わが国医療の現状と課題 - 三井住友信託銀行.PDF

三井トラスト・ホールディングス 調査報告 わが国医療の現状と課題 ～規制緩和とＩＴ化の推進が鍵～ 【要約】 ・わが国の医療制度は、①国民皆保険、②フリーアクセス、③出来高払い中心の診療報酬点数 （公 定価格）制、という特徴を有する、安心かつ便利なシステムである。アクセスの良さとコスト 抑制に成功し、世界的にみれば非常に良いパフォーマンスを有してきたが、医療を巡る環境変 化に伴い、制度の改革の必要性が増している。 ・国民医療費は、高齢化の進展、疾病構造の変化、医療の高度化によって年々増大しており、今 後高齢化が急速に進展する中、医療費の増加が避けられない状況にある。わが国の医療保険制 度は、賦課方式(世代間所得移転) となっているため、支え手である現役世代が減少する中、制 度の持続可能性の確保が喫緊の課題となっている。 ・近年の傾向として、財政的制約による医療費の抑制という点が前面に出ているが、医療の供給 サイドでは、病院経営の悪化や医師不足等、平等なアクセスそのものが危機にさらされている。 ・無駄を省く効率化は必要だが、真に必要な医療サービスへは資源を割り当てることは必要であ る。国民（患者）側からも情報開示や説明責任が求められおり、国民のニーズに立った医療提 供体制を築くことが望まれる。そのためにも、規制緩和と情報（ＩＴ）化の進展が大きな鍵と なろう。 １．日本の医療制度の特徴 ② フリーアクセス（患者が医療機関を自由に まずはじめに、わが国の医療制度の特徴をみ 選べる） てみよう。わが国の医療制度は、 ③ 出来高払い （医療機関が医療行為を重ねる ① 国民皆保険１ （だれもが保険制度に加入し、 ほど収入も増える診療報酬体系）を中心と 保険料を払う代わりに重い負担なしに医 した診療報酬点数 (公定価格)制 療サービスが受けられる） １ わが国の医療保険制度は、職業の形態に着目し、同 一地域内において保険集団を形成する地域保険と同 政府管掌 種の職業の物同士で保険集団を形成する職域保険と 国民健康保 3,564万人 に大別され、国民はいずれかの医療保険に加入する。 険(市町村） 平成16年度末 職域保険は、被用者保険と自営業者保険とに分けら 4,761万人 1億2,677万人 れ、被用者保険には、主として大企業の被用者をカ バーする組合管掌健康保険、主として中小企業の被 組合管掌 用者をカバーする政府管掌健康保険、船員、共済組 合（国家公務員、地方公務員、私立学校教職員）が 国民健康 2,967万人 ある。自営業者保険は、医師や弁護士、理美容師等 保険組合 による国民健康保険組合がある。地域保険としては、 397万人 共済組合 971万人 船員保険17万人 市町村による国民健康保険がある。