投票率低下を考える.PDFVIP

4 6 8 10 12 14 2 3 16 19 20 22 24 身近な議会に関心を持とう 慶應義塾大学法学部教授　片山善博 　選挙で「いい人を選ぶ」ことは有権者にとって 案件が審議される日の該当の 大切なことだし、投票に行く人のほとんどはそう 時間帯だけ、会社に休みをも している。では、いざその選ばれた人たちが「い らって参加してみるのはどう い仕事をしている」か、実はこれが肝心なのだが、 か。これが裁判所であればそういうことも可能だ はたしてどれほどの有権者がそのことに注目して が、地方議会の場合にはほとんど意味がない。い いるだろうか。 つ保育所待機児童問題が議会で取り上げられる 　この点で、本当はみんなが一番関心を寄せなけ か、皆目わからないからである。もちろん、議会 ればならないのが市町村議会である。まず、市町 が開かれている期間中のどこかでその問題が取り 村はわれわれの地方自治の拠り所である。地方自 上げられるかもしれないが、それが前もって示さ 治とは、地域のことは地域に住む人が責任を持っ れることはない。場合によっては、ついぞ取り上 て決めることであり、市町村は住民にとって最も げられないことだってある。 身近な存在なのだから、地方自治は市町村におい 身近な議会に変えるには てこそ実現しやすい。その市町村の予算や条例な 　わが国の地方議会制度はアメリカのそれをモデ ど重要なことを決める役割を担っているのが、ほ ルとしているが、そのアメリカの市議会は毎週決 かならぬ市町村議会である。 められた曜日の決められた時刻に開かれるのが一 縁遠い地方議会 般的で、夕方に開会時間を設定しているところも 　失礼をかえりみずにいえば、市町村議会は一部 多い。また、その日に審議する議題はあらかじめ の例外を除いて全国どこに行ってもあまり評判が 公表されているので、住民は関心のある議題の日 よくない。例えば、これまで国や県が決めていた に予定を立てて議会に足を運ぶことができる。 ことをこれからは市町村が決めるとする地方分権 　しかも、アメリカでは議会に参加した住民は、 改革に賛成ですかと聞いてみると、ほとんどの人 希望すれば議場で意見を述べる機会が与えられ は取りあえず賛成する。ところが、「市町村が決 る。その日審議される議題について賛否を述べた めるとは、最終的には議会が決めることなのです り、政策提案をしたりして、それに議員たちが真 よ」と説明した後でもう１回同じ質問を発してみ 摯に耳を傾け、なるほどと思われる発言は議会の ると、答えは大きく変わってくる。それなら今ま 決定に影響を及ぼすこともないわけでない。かた でどおり国や県で決めてもらっ