建物高さの歴史的変遷（その1）.PDFVIP

土地総合研究 2008年春号 15 【研 究 ノ ー ト】 建物高さの歴史的変遷 （その １） ― 日本における建物の高さと高層化について― 大澤 昭彦 1 １．はじめに 神殿、物見櫓、モニュメントなどの説が存在しているが 、 いずれにしても、これらは居住等の生活の場ではなかっ 2 た 。 洋の東西を問わず、都市には巨大な建造物がつくられ てきた。古代エジプトのピラミッドやメソポタミアのジ ２－２．出雲大社 クラットをはじめ、ギリシアのパルテノン神殿、中世の 出雲大社本殿の現在の高さは８丈 （約２４ｍ）であるが、 城郭都市の塔、ゴシック様式の教会、大名の天守閣、高 かつてはその倍の１６丈（約４８ｍ）あったと考えられて 層オフィスビルなど、それらは為政者の権威や自己顕示 3 いる 。そのような巨大な社殿があったことを疑問視する 欲、富などを象徴すると同時に、市民にとってはランド 声も多かったが、２０００ （平成１２）年に丸太３本を金属 マークとして親しまれ、都市のスカイラインや街並み景 の帯で束ねた巨大柱の柱根が発見され、その存在が裏付 観を規定してきた。 4 けられたとされる。 市街地の高層化はいまや当たり前のことではあるが、 良好な景観や市街地環境を形成していく上で建物の高さ ２－３．古代の宮殿建築 は重要な要素であり、高さ制限が必要になることが少な 邪馬台国 （２～３世紀）の女王卑弥呼について、『魏志』 くない。しかし、高さ制限を考える前提として、そもそ には「婢千人を侍らし、宮室楼観城柵厳に設く」と記し も建物の「高さ」は何を意味するのかを整理する必要が てあることから、当時の宮殿建築が大規模であったとさ あるのではないか。 5 れる 。また、５世紀には、応神天皇の難波大隈宮、仁徳