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特集特集 救急対応のゴールドスタンダードとピットフォール救急対応のゴールドスタンダードとピットフォール はじめに 　顎口腔領域に外傷を生じた場合は，解剖学的に血行が豊富 6 な領域であるため，口腔や咽頭の出血，血腫や腫脹をきたし やすく，また下顎骨骨折においては舌根沈下を伴うことも多 いため，気道閉塞が起こりやすい．このため，初期治療とし て最も重要な点は確実に気道を確保して適切な呼吸管理を行 うことであり，次に重要な点は出血に対する止血処置である． 　顎口腔領域の外傷は，単独で生じるより，交通外傷や転落外 口腔領域 傷などの重症鈍的外傷の一部として発症することが多いため， 他部位の損傷にも注意を傾ける必要がある．重症外傷患者の初 期治療の大原則である「診療（検査，治療）の優先順位を常に 1） 1） 2） 考える」ことを忘れてはならない ．そのため，救急治療部を 里見貴史 　近津大地 中心に各専門領域が集まり，優先順位の高いものから順にチー 1）東京医科大学 口腔外科学講座 講師 2）東京医科大学 口腔外科学講座 主任教授 ム医療が行われる．咀嚼や咬合機能回復のための治療は，全身 状態が許すなら，できるかぎり早期に行うことが望ましいが， 重要臓器損傷の治療が優先されるため，ある程度腫脹や疼痛が 消退し，顎運動が可能になるまで待機して，より詳細な診査診 2） 断を行ったうえで可及的速やかに行われなければならない ． 　本章では，実際の症例を提示して，受傷直後の応急処置，画 像診断，咀嚼や咬合の機能を回復させるための治療に至る経過 を説明しながら，その対応について述べる． 1. 顎口腔領域の外傷治療 Point ❶ 口腔内出血を伴う顎口腔外傷への 的確な初期治療について理解する． 顎骨骨折の病態と臨床的特徴を理 Point ❷ 解し，初期診断に習熟する．