目标指向型体外循环管理Goaldirectedperfusionについて-J-Stage.PDFVIP

Jpn J Extra-Corporeal Technology 44（2）：73 − 80, 2017 目標指向型体外循環管理（Goal directed perfusion）について JaSECT 学術委員会文献レビュー部会 1） 2） 3） 4） 5） 6） 7） 加藤貴充 ・林　輝行 ・紺屋本哲也 ・中島康佑 ・丹木義和 ・西塔　毅 ・荒木康幸 索引用語 ：適正灌流、酸素運搬量、二酸化炭素産生量、急性腎障害、高乳酸血症 A review of Goal directed perfusion 1） 2） 3） 4） 5） 6） Takamitsu Kato ，Teruyuki Hayashi ，Tetsuya Koyamoto ，Kosuke Nakajima ，Yoshikazu Tangi ，Takeshi Saito ， Yasuyuki Araki 7） Key words ：optimal perfusion，oxygen delivery，carbon dioxide production，acute kidney injury，hyperlactemia Ⅰ．は じ め に perfusion：GDP）という新しい人工心肺管理法が提唱 された2） 　人工心肺管理において灌流量の決定は最も基本的で 。この目標指向型治療（goal directed therapy： 重要な項目であり、体表面積を基準に現在でも概ね 2.0 GDT）という概念は、敗血症に対する治療において先 〜 3.0L/min/m2 の範囲で決定され、安全にかつ心臓外 行的に実施されており、管理の標準化や治療成績の向 科手術成績向上に寄与してきた。人工心肺中の灌流量 上が期待され、現在も継続的に議論されている。人工 は、低体温や血液希釈の導入、チアノーゼ性心疾患で 心肺管理においても GDP が標準化や成績向上に寄与 の気管支還流量（無効送血量）増加といった患者の状 する可能性に大いに期待したいところである。そこで、 態変化に伴い、その時点で最適に調整されることが望 本レビューでは適正灌流量について再考するとともに、 ましい。しかし、臨床における灌流量の管理は、技士 この GDP の現状について述べたい。 個人の経験や実施施設の考え方に委ねられる側面があ る。更に、人工心肺に関連した合併症は未だ解決され Ⅱ．適正灌流量の決定方法とその問題点 ておらず、不適正灌流に起因すると考えられる合併症 1．適正灌流量の決定方法 も報告される。このような不適正灌流により発生する 　適正灌流量の決定方法について Kirklin らは、全身 代表的な病態は嫌気性代謝による酸素負債であるが、 麻酔により酸素消費量が 25％低下することから、術前 2006 年に Ranucci らが従来の体表面積を基準とした考 心拍出量の 75％が適正灌流として位置づけており 3） 、 えではなく、酸素運搬量（DO 2）と二酸化炭素産生量 Seninng らもまた術前心拍出量の 80％を適正灌流であ 4） 2