地学分野地质-日本科学教育学会.PDF

日本科学教育学会研究会研究報告　　Vol. 29　No. 1（2014） 地学分野(地質)のものの見方・考え方 ～学びの交流会(附属中学校)での授業実践報告～ Science Lesson that Helps Children Expand their Ways of Seeing and Thinking through Teaching Materials of Earth Science:Practical Work at an Learning Assembly(Junior High School Attached to Faculty Education,Kumamoto University) 田中健太¹・寺田昂世²・田中均³ TANAKA，Kenta¹ ・TERADA，Kosei² ・TANAKA，Hitoshi³ 熊本大学教育学部¹・熊本大学大学院教育学研究科²・熊本大学教育学部³ Faculty Education,Kumamoto University [要約] 本研究の目的は地学分野のものの見方・考え方を養うため，①露頭で見られる地質構造，② プレートテクトニクスによる大地の形成について生徒に考えさせ，さらにその考えをより実感の 伴ったものとし，視覚的に捉えることができるようにするための教材を開発した．地質構造におい ては，見かけの正断層と見かけの褶曲を取り上げ，また，プレートテクトニクスにおいては，イン ド大陸や伊豆半島の衝突による変動地形を取り上げた． 授業実践は，Ｈ２６，９，２２に熊本大学と教育学部附属中学校の連携事業「学びの交流会」の 一環として実施した．授業では①と②について関連を持たせながらそれぞれ50 分ずつ授業を行い， 教材の有効性を検証するとともにこれから検討すべき課題も明らかになった． 本論文は，学びの交流会で行った授業実践で用いた教材について報告するものである． [キーワード] 見かけの正断層，見かけの褶曲，地層の傾き，プレートテクトニクス，陸地の衝突 １．はじめに いる場合もある(図２)． 「学びの交流会」は，熊本大学と熊本大学教育 このように傾いた地層では，実際は褶曲してい 学部附属中学校との連携事業であり，平成２２年 ないのに褶曲しているように見えることや から年に一度行われている．生徒が大学に来て， (図３)，実際は横ずれ断層であるのに正断層の 様々な講座の中から，中学生が興味のある講座を ように見えてしまうことがある(図４)．つまり 受講するという内容のものである．生徒が普段 地形的要因と地層が傾いていることで，地層の 経験することがないような分野の講座や，興味 ・ 見え方が変わってしまう．言葉によって生徒に 関心がある講座などを自由に受けることで，生徒 地層を立体的に捉えさせようとしても，空間把握 たちの知的好奇心を刺激し，将来の可能性を広げ 能力に差がある生徒を，実感が伴った理解へとつ ることを期待している． なげることは難しい． 今年度の学びの交流会は，教育学部理科地学研 そのため，地層を視覚的・多面的に捉え，地層 究室で実施し，生徒が普段あまり注意して見たり の構造が理解しやすくなるような地層モデルを 考えたりすることのない地層の構造や，プレート 作り，授業の中に取り入れることで，生徒の理解 テクトニクスによる地形の形成についての内容 の助けとすることを目的としている． を取り扱った．中学校一年生の既習