金沢21世纪美术馆视察.pdfVIP

「金沢21世紀美術館」を視察して 岩国市議会議員 渡 吉弘 1 はじめに いま、地方自治体が経営している「箱もの」所謂 「施設」が厳しい状況に置かれている。 そのような状況の中、ここ岩国市でも 「宇野 千代記念館の建設構想」や 「錦帯橋資料館構 想」が相次いで暗礁に乗り上げた。「そのよう な大金をつぎ込んでも元は取れない」「なぜこ のような時期に…」というのが大きな理由で ある。 今年の春、NHK の 「クローズアップ現代」 で 『どうなる わが町の美術館』というテー マで、苦しい状況におかれた公立美術館の 「冬の時代」の現状がレポートされた。 そこで、「旭山動物園」と共に 「全国の公立勝ち組施設」として並び称される 「金沢 21 世紀美術館」を訪れ、総務課長補佐の西川さんから立ち上げから現在までの苦労話や人気 の秘密についてたっぷりとお話を伺ってきた。以下がその報告である。 ２ 金沢市の概要について 15 世紀後半から 16 世紀末、蓮如上人の北陸布教で勢力を強めた農民中心の一向宗の信 者が、加賀の守護であった富樫政親を滅ぼした。その後、金沢のまちづくりは浄土真宗の 本願寺の末寺 「金沢御坊」の周辺に後町、南町などの町がつくられたことから始まったと 言われている。 そして天正8 年 （1580 年）柴田勝家の甥、佐久間盛政により金沢御坊は攻め滅ぼされ、 盛政はここに 「金沢城」を築いた。しかし、天正 11 年 （1583 年）盛政が賎ヶ岳で敗れ戦 死した後、七尾小丸山城にいた前田利家が金沢城に入城。その時以来、加賀 ・能登 ・越中 を合わせた 「加賀百万石」の城下町として繁栄を続けることになった。 明治4 年 （1871 年）廃藩置県後、金沢町となり、同22 年4 月 1 日市制が施行され、石 川県の県庁所在地として、政治 ・文化 ・経済の中心として発展を続けた。そして、大正13 年以来 10 数回にわたる隣接町村との合併を経て、市街地規模の拡大を図り、平成 8 年 4 月 1 日に中核都市となった。 金沢市は、幸運にも長い間大きな災害にも遭わず、和菓子 ・加賀友禅 ・金箔 ・九谷焼な ど歴史的伝統文化と美しい自然環境を維持している素敵な街である。香林坊、武蔵ケ辻と いう商業地を拠点に、駅周辺地区の再開発や駅西副都心づくりも活発に行なっている。 また、金沢大学の移転に伴って、環状道路など基盤 整備も進み、金沢の個性ともいえる学術 ・文化 ・伝統 環境などを磨き、高めながら、小さくても世界の中で 独特の輝きを放つ 「世界都市 ・金沢」の形成を目指し ている。（参考 ：金沢市のは面積 467.77 平方キロ㍍、 人口約44 万1000 人、世帯数約 17 万5000 世帯） - 1 - ３ 金沢21世紀美術館について ご承知のように、昨年 10 月に開館したこの 「金沢 21 世紀美術館」の建物は、設計 「妹島 和世＋西沢立衛/SANAA」によるもので、ヴェ ネツィア ・ヴィエンナーレ国際建築展で 「金獅 子賞」を獲得した名建築である。